オピニオン

2021年4月10日

法華経への恋慕心を繋ぐ

 私たちが日々拝読している妙法蓮華経(法華経)は、8巻28品からなっています。この経典は、中国の五胡十六国の時代、亀茲国出身の鳩摩羅什三蔵が後秦の姚興王の勅命を受けて、西暦406年に漢訳されたのであります。
 ところで、法華経の全28品の内容を解説するようにとの依頼を受け、およそ4箇年にわたり、あらためて拝読する機会を得ました。
 もちろん、日蓮聖人がどのように法華経を受けとめ、法華教学を樹立され、末法の凡夫が、大恩教主釈尊の救いにあずかることができるのか、という課題が、私の一貫した問題であります。しかし、聖人が法華経解釈の基本とされているのは、陳・隋の時代に活躍された天台大師智顗(538~597)の講述された『法華玄義』『法華文句』『摩訶止観』の三大部ですから、これらを離れて、聖人の教学は成立しないのです。
 そのことから、日蓮聖人のご遺文を中心に据え、三大部を参照しながら、法華経拝読の過程において気づかされたことを、紹介させていただきたいと思うのです。
 ご承知のように、法華経は、序品第1にはじまり、普賢菩薩勧発品第28で終りを迎えます。序品は、法華経が説きはじめられる糸口で、天台大師は、他の経典にも見られるように、釈尊がいつ、どこで、だれを対象に、教えを説かれているのか、ということが示される「通序」の部分と、法華経にだけ示される「別序」の部分が説き示されている、と解釈されています。
 最終章である普賢菩薩勧発品では、法華経が説かれている、娑婆世界のインドのマガダ国の霊鷲山の釈尊のもとに、東方世界の宝威徳上王仏国から、普賢菩薩がはかり知れないすぐれた大菩薩方とともに到来され、そして、釈尊に対して、「どうか、私たちのために法華経の教えを説いてください」と、要請されるのです。そこで、釈尊はふたたび「四法」を示されることによって、法華経を再演(ふたたびのべる)されることになります。
 このように、普賢菩薩が釈尊に対して、尊い法華経の教えを説き示されるように、と要請されていることから、「勧発品」と名づけられているのです。
 そのことを天台大師は、『法華文句』巻第10下に、「勧発とは、法を恋うの辞なり」(『大正蔵経』第34巻148頁a)と解釈されています。つまり、法華経の最終章は、普賢菩薩が、釈尊の説き示される法華経に対して、限りない情愛と、尊い思いを抱かれていることから、釈尊に対して法華経の再説を要請されている、という解釈がなされているのです。そして、普賢菩薩は、法華経に対する恋慕心によって、滅後の法華経の行者を守護することを誓われ、また法華経の広宣流布を誓われ、さらに法華経の行者に対しても、悪鬼などの障害に対して、咒文によって、排除することの誓願がなされているのです。
 もちろん、日蓮聖人の教えは、久遠の釈尊(本仏)が、久遠の本法(要法・題目)を、久遠の弟子(本化地涌の菩薩)に手渡されることを闡明化されました。東方の普賢菩薩が、かぎりない法華経に対する「恋慕心」をもととして、勧発されているとすれば、末法の私たちは、久遠の仏、久遠の法、久遠の本化菩薩への渇仰・恋慕心をもととして、題目の教えが断絶することなく、末法の人びとの大灯明として、未来の人びとに手渡さねばならないのではないか、と思われてならないのです。
(論説委員・北川前肇)

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