ひとくち説法
2021年3月10日号
「猫の恩返し」
彼岸や施餓鬼会に参加しては、多くのご先祖に塔婆供養を重ねてきたSさんは、国道45号線沿いで民宿を営んでいました。Sさんは、行き交うトラックなどに轢殺された猫の遺骸を見捨てて置けず、丁寧に葬っては当山で塔婆供養をしてきました。幾匹もです。ある冬の寒い日、来山してのこと。「お上人さん、今朝、明け方夢を見ました。私が狐の首巻きのようなものをして温もっています。でもよく見ると猫だったのです」。私はこう応えました。「鶴の恩返しならぬ、猫の恩返しですね。Sさん」。「そんなことがあるんですね」。
日蓮聖人は、「丈六の卒塔婆をたてて、其面に南無妙法蓮華経の七字を顕しておはしませば、北風吹けば南海の魚族、その風にあたりて大海の苦を離れ、東風きたれば西山の鳥鹿、その風を身に触れて畜生道を免れて都卒の内院に生まれん」(『中興入道御消息』)と、卒塔婆供養の功徳を述べておられます。
(岩手県布教師会長・三浦恵伸)
2021年3月1日号
変化の人
コロナ禍によってこの1年間は、我慢と辛抱の中で、さぞ不安な生活を強いられたことでしょう。しかしそんな時だからこそ気付かされることもあります。昨年私は思いもかけず、人生初の全身麻酔手術を体験しました。事前検査で異状が見つかり、不安を感じながら手術の朝を迎えました。初めて入る手術室。緊張の中、覚悟を決めて手術台に上がりました。周りではスタッフが手際よく準備をしている様子。と、その中の1人が突然話しかけてきました。「私、息子さんと同級だったSです」改めて顔を見て……思い出しました。と同時に、スーッと不安が消えて心が楽になったのです。「そうか、息子の友だちに見守ってもらえたら安心…」と口にした後、意識がなくなりました。手術は無事終わりましたが、私にとってS君はまさに変化の人でした。「信心強ければ変化の人が現れ護る」。国難続く中、私たち自らも変化の人となるよう、全集中で努めて参りましょう。
(山形県布教師会長・外塚顕龍)
変化の人
コロナ禍によってこの1年間は、我慢と辛抱の中で、さぞ不安な生活を強いられたことでしょう。しかしそんな時だからこそ気付かされることもあります。昨年私は思いもかけず、人生初の全身麻酔手術を体験しました。事前検査で異状が見つかり、不安を感じながら手術の朝を迎えました。初めて入る手術室。緊張の中、覚悟を決めて手術台に上がりました。周りではスタッフが手際よく準備をしている様子。と、その中の1人が突然話しかけてきました。「私、息子さんと同級だったSです」改めて顔を見て……思い出しました。と同時に、スーッと不安が消えて心が楽になったのです。「そうか、息子の友だちに見守ってもらえたら安心…」と口にした後、意識がなくなりました。手術は無事終わりましたが、私にとってS君はまさに変化の人でした。「信心強ければ変化の人が現れ護る」。国難続く中、私たち自らも変化の人となるよう、全集中で努めて参りましょう。
(山形県布教師会長・外塚顕龍)