日蓮宗新聞

2021年3月1日号

小湊誕生寺で宗門法要含む盛大な3日間

800年宗門法要貞応元年(1222)の2月16日。安房小湊(現千葉県鴨川市小湊)のある場所で泉がわき、蓮華が咲き、海には鯛の群れが飛び跳ねた。この3つの奇瑞とともに1つのいのちがご誕生された。子の名は、善日麿といい、後に全人類の安穏のために立ち上がられた日蓮聖人、その人である。
お生まれから数え800年のご正当にあたる令和3年(2021)2月16日。ご降誕の霊跡・大本山小湊誕生寺で日蓮宗管長・菅野日彰猊下(大本山池上本門寺貫首)を大導師に50年に一度行われる日蓮宗三大法会の1つ「宗祖降誕八百年慶讃大法要」(宗門法要)が営まれた。全国からの声明師・修法師が代表して出仕し、最上の儀をもって日蓮聖人の鴻恩に謝を尽くした。
また新型コロナウイルス感染拡大防止のため、法要はインターネットで動画配信され、全国の僧侶檀信徒とともに日蓮聖人のご降誕から現在いただいているお題目のご縁に思いを馳せ、感動の時間を共有した。
誕生寺では16日の宗門法要のほか、15日には千葉教区主催の法要、17日には誕生寺主催の式典などが感染対策を徹底して行われ、800年が盛大に祝われた。
■50年の集大成法要
宗門法要「宗祖降誕八百年慶讃大法要」は2月16日の日蓮聖人誕生のご聖日に営まれた。50年に一度の三大法会の1つ「降誕会」は、声明を中心に修法も採り入れられた大法要となった。式次第を検討した降誕八百年法要部会員は、昭和46年に行われた降誕750年の大法要の式次第を披見しながら、次の850年の節目に向けて誇れるものを目指し、声明曲「誕生会伽陀」「十方礼仏」「高祖讃」を加える試みを行った。日蓮聖人のご降誕を讃える「誕生会伽陀」は平成4年の誕生寺復興の時に作られ、十方の仏に礼拝する「十方礼仏」は古来伝わるが、平成12年のドイツ・ハノーバー万博での法要(導師=藤井日光管長・当時)で大きく披露されたもので、また聖人の恩恵に感謝し讃える「高祖讃」は昭和56年の日蓮聖人第700遠忌で初演されたもので、50年の歴史の集大成を捧げたといえる。また日蓮宗声明導師の上田尚教師が高い技術をもった声明師を選出したことにより、雅楽も含め音楽性を中心にしたご降誕を讃える法要となった。
■声明で讃え修法で願う
当日の法要は堂内を荘厳する灑水散華で始まり、「誕生会伽陀」を唱えながら大導師の菅野日彰管長猊下や副導師の石川日誕生寺貫首、井上日修本山会会長らとともに式衆が入堂。再び声明数曲が唱えられ、お釈迦さま、日蓮聖人、法華経、四菩薩などへ帰依を捧げた。続いて吉田顕嶺修法師会連合会長を修法導師に日蓮宗で古来伝承されている力強い修法が行われ、日蓮聖人の願いである世界の平和が祈られた。
法要の趣旨を述べ誓う「表白文」は中川法政宗務総長がご宝前に立ち読み上げた。中川総長は降誕800年を機に宗門運動や慶讃事業を実施し、「混迷する社会に一大灯明を点じ、宗祖の心願実現に邁進する」と奉告した。
■立正安国のご遺命に
読経は日蓮聖人の上行菩薩のご自覚と関係が深い「如来神力品」が唱えられた。雅楽の音が鳴り響く中、慶讃文を読み上げるため、菅野猊下がご宝前まで恭しく歩を進められた。菅野猊下は、800年前の同日においての三奇瑞を伴ってのご降誕を言祝ぐとともに、『妙法蓮華経』の光明をもって衆生救済のために立ち上がられたことへの感謝の赤誠を示された。また現状の世界を顧みられ、日蓮聖人のみ教えである「身の安堵を思わば、まず四表(世界)の静謐を祈るべき」をひもとかれ、「立正安国・皆帰妙法のご遺命に応えんことを誓願し、併せて世界平和、人類の幸福を祈念し奉る」と言上された。
■世界の視聴者とお題目
お題目は、祖師堂での参列者や世界の視聴者が一体となって同時に唱えられ、ご降誕の悦びが世界に充満した。
菅野猊下はご親教で世界の人たちとともに御経頂戴した後、「私たちは忘れてしまっているのではありませんか?」と問いかけられ、「法華経の従地涌出品で呼び寄せられ、法華経の流布を命じられた無数の菩薩は私たち1人ひとりであり、仏さまから頂きを撫でていただいた存在であることを。日蓮聖人は〝地涌の菩薩にあらずんば、唱えがたき題目なり〟とおっしゃられています。今日はそのことを思い出す尊い日でもあります」と促された。そして「自らは心の安心、他の人びとには心の安らぎを呼びかけ、世界に向けて立正平和を呼びかけようではありませんか」とお言葉を結ばれた。
中川総長も「全人類が直面している命の危機、心の崩壊を救う良薬であるお題目を僧侶檀信徒一体となって全世界に発信する覚悟を示す日」と日蓮聖人の意思を受け継ぐことを求めた。
※   ※
政府の緊急事態宣言を受けて、出仕僧侶、参列僧侶は大幅に減らしての法要となった。参列は宗務内局、全国の本山貫首や宗会議員・宗務所長、また森英介衆議院議員(千葉県南部檀信徒協議会長)、武見敬三参議院議員、イラストレーターの天野喜孝氏、現代アーティストの小松美羽氏、亀田郁夫鴨川市長など約140人。
※   ※
◇日蓮宗新聞社編集部からのご報告
日蓮宗新聞で募集した「日蓮聖人への誕生日メッセージと誓いの言葉」でいただいたお手紙はすべて2月16日のご聖日に誕生寺に奉納いたしました。誕生寺さまのご高配により、ご宝前で日蓮聖人に一番近い場所に安置していただきましたことをご報告いたします。

◇伝統仏教教団の宗門法要では全国初のオンライン参列
2月16日の宗門法要はカメラ8台が入り、インターネットでライブ配信された。これは新型コロナウイルス感染拡大防止のほか、全国のみならず海外の僧侶檀信徒とともにご聖日の感動を共有するために、ウェブ会議システム「zoom」や動画配信サイト「Youtube」を利用したオンラインでの参列ができるようにしたもの。伝統仏教教団の宗派が主催する大法要でのオンライン参列形式は全国初。
当日は、日本海外含め約2400人がオンラインで参列。とくに「zoom」での参列者は誕生寺祖師堂内に設置された10台のモニターに映し出され、さもその場で参加しているような形態がとられた。またライブ配信では次第が進むごとにテロップで声明曲などの解説がなされ、視聴者がより法要に入り込みやすいように工夫された。

◇15日
IMG_3326■荒天のなかのお題目
2つの低気圧が日本列島を挟み込み荒天となった2月15日は千葉教区主催の慶讃行事が行われた。まず「青蓮華が咲いた蓮華ヶ淵」「鯛が飛び跳ねた鯛の浦」「わき出た泉を表す誕生井戸」のご降誕三奇瑞を象徴する3ヵ所で法要が営まれた。この3法要では、それぞれの場所での奇瑞を顕彰するとともに、その場所での象徴物を当日最後に行われた「御幼像遷座三奇瑞奉奠式」で捧げるために行われた。
蓮華ヶ淵では激しい波風と雨を受けながら千葉県南部の荻野泰継所長ら2人がうちわ太鼓に合わせ唱題を重ね、最後にその場所で灯した火を「蓮華ヶ淵の奇瑞」とした。鯛の浦では遊覧船乗り場にある鯛の浦会館で千葉県西部の山本隆真所長を導師に読経し、誕生寺の人気の縁起物・願満の鯛に祈りを込め「鯛の奇瑞」とし、また誕生井戸での法要は中止となったが、汲み上げられた井戸水を「泉の奇瑞」とし、無事に3つが集められた。
その後、3つの奇瑞の象徴物とともに、例年の降誕会と同じくご幼像の行列が、誕生寺から約700㍍離れた日蓮聖人のご両親が眠る妙蓮寺を出発。強風に負けない力強いお題目を僧侶檀信徒約60人が唱え、ご幼像を大事に誕生寺まで渡御した。境内に入ると、天からの祝いを受けるように仁王門の上から散華がまかれ彩りを添えた。
■三奇瑞を再び聖人へ
遷座式では、本堂ご宝前に遷座されたご幼像を寿ぐように荻野所長、山本所長、そして千葉県北部の北原輝信所長が三奇瑞を奉奠。導師の冨永観瑞千葉教区長(千葉県東部所長)が慶讃文を読み上げ聖人の忍難慈勝のご遺徳を偲ぶとともに、末法の衆生に教えを示されたことに謝意を表した。法要後、冨永教区長は「降誕800年を迎えありがたい気持ちでいっぱいだと思います。この気持ちをもとに、行き過ぎた世の中でいのちを活かすために、私たちは何ができるのかを考え行動するという原点に立たなければなりません」と参列の僧侶檀信徒に語りかけた。

◇17日
IMG_5498■ご両親にも感謝
2月17日には誕生寺主催の「御幼像渡御之儀」と「御降誕800年報恩式典」が檀信徒の参列を主にして行われた。強風のため大人数での渡御之儀は中止となったが、祖師堂で日蓮聖人ご幼像とご両親像の遷座が行われた。例年はご幼像のみの遷座だが、今年は800年の節目に日蓮聖人を産まれ育てられたご両親にも感謝を捧げるために奉安された。
■世界の人たちを笑顔に
約180人が参加した式典は、誕生寺の石川日貫首が尊座に着き開始。まず10代~80代までの代表誓願者8人がご宝前に立ち、参列者とともに「世界人類の幸福を願い、すべてのいのちを敬い、尊び、精進していく」と日蓮聖人へ誓願した。全員でお題目を唱えた後、報恩奉納之儀が行われ、歌手の黒岩安紀子さんがオリジナル曲「たちばなの人」を歌い上げ、小湊の歌題目保存会の「小湊歌題目」と三妙寺踊り子連の「大日蓮」の奉舞が行われた。
最後に角濵監鏡執事長が「降誕800年以後も、全国の方々の心の蘇りの道場として、また法華の道場として心の拠り所になるように、日蓮聖人への給仕の誠を捧げて参ります」と挨拶し、石川貫首をはじめ、山内一丸となって誕生を護持顕彰していくことを誓った。
10代の代表誓願者・杉本和奏さん(高3・18歳)は大役を終え、「夢は空港のグランドスタッフになること。いろんな国の人たちが笑顔でいられるように、安全を支えたい」と節目に誓えたことを喜んだ。
誕生寺では昨年、お題目を唱える他教団とともにお題目サミットを開催。来年、再び開くことを計画している。

 

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新年のご挨拶。

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