2021年3月1日
■結び直す
寺の掲示板に「コロナ大逆転物語」のポスターが貼られている。このキャッチコピーは、地元の高校広報部と人権擁護委員会とのコラボで誕生した。コロナウイルスと最前線で対峙する医療関係者や感染者に対する偏見と差別に胸を痛めた共通認識から、コロナ禍の中で失われたものは何だったのか?コロナ収束後の社会で、私たちは何を拠り所として生きていくのか、と話を深めていった。そして「人と人とのつながりの大切さに気付いた自分たちが、社会に提案し実践できることは何だろう」と高校の美術部と共同製作したのがそのポスターだった。委員の1人として参加していた私は、そこに「他者への想い」の気づきがあったと信じている▼こんなことがあった。コロナを理由に、誰にも知らせず家族葬で済ませたい遺族側と、参列希望の故人の友人や近所の板挟みになった。故人は、周りの人に元気を与えて皆から慕われるお寺1の人気者だった。何とか総代1人を代表として参列させ、皆の香典を届けた。出棺の時、駐車場の片隅で、涙ぐみ合掌して見送る3人の檀家がいた。それを見た家族だけと主張した孫が「コロナのことで頭がいっぱいで、バァちゃんが田舎でどんな暮らしをしていたのかと考える余裕がなかった」と呟いた▼コロナは人のつながりを分断する。それを1つひとつ結び直すのもコロナ逆転物語だと私は思った。(雅)