ひとくち説法
2020年11月20日号
冥福を祈ります
「心よりご冥福をお祈り申し上げます」。弔問の挨拶としてよく使われる言葉ですが、いつも疑問に思っていました。大切な人を亡くし悲しんでいる場で、幸運・幸いを表す「福」が入った挨拶言葉を交わすなんて…と。
亡くなってから四十九日間を中有、または迷いの世界を表す冥界・冥土ともいいます。「冥福」とは、四十九日間の旅路を迷うことなく幸いに終えて欲しいと願い、故人に向けて気持ちを表す言葉なのです。葬儀式の引導や回向も同じ。冥界で迷うことなく浄土へ向かって欲しいと祈り、諭し教示するとても大切な仏事なのです。
近ごろは家族に迷惑をかけたくないとの思いから、葬儀をしない人も増えているそうですが、冥界で迷い浄土へ辿り着かない霊が増えるのではと想像するだけで恐ろしい思いがします。どの様な形の葬儀でも良いから、しっかりとお題目でお送りし、浄土に向かって頂きたく思います。
(長野県布教師会長・大橋一雄)
2020年11月1日号
心で聞く声
聞という漢字は、両開きの戸を開けて耳で話をうかがうという意味の象形文字が起源とされています。簡単に言うと耳をかたむけて話を聞くという意味になります。
先日お寺で法事がありましたが、その日は朝からあいにくの大雨でした。ザーという雨音を聞きながら法事を終え、ちょうど法話が終わるころ、雨が上がっていました。それを見た故人の息子さんが感慨深い調子で、「あ、雨が上がってる。きっと親父が今日の法事を喜んでくれとるよ」。
と、言うと法事に参列された人たちがうなずきあう姿に出会いました。私は、この姿に亡き人の声は聞くことはできませんが、心に澄まし傾けることで声を聞くことことができることを知りました。
みなさんも仏壇の前で、法事の心でそっと澄まして、心の耳をかたむけてください。みなさんの心にも聞こえる声があります。
(愛媛県布教師会長・讃岐英昌)