オピニオン
2020年11月20日
冥福を祈ります
「心よりご冥福をお祈り申し上げます」。弔問の挨拶としてよく使われる言葉ですが、いつも疑問に思っていました。大切な人を亡くし悲しんでいる場で、幸運・幸いを表す「福」が入った挨拶言葉を交わすなんて…と。
亡くなってから四十九日間を中有、または迷いの世界を表す冥界・冥土ともいいます。「冥福」とは、四十九日間の旅路を迷うことなく幸いに終えて欲しいと願い、故人に向けて気持ちを表す言葉なのです。葬儀式の引導や回向も同じ。冥界で迷うことなく浄土へ向かって欲しいと祈り、諭し教示するとても大切な仏事なのです。
近ごろは家族に迷惑をかけたくないとの思いから、葬儀をしない人も増えているそうですが、冥界で迷い浄土へ辿り着かない霊が増えるのではと想像するだけで恐ろしい思いがします。どの様な形の葬儀でも良いから、しっかりとお題目でお送りし、浄土に向かって頂きたく思います。
(長野県布教師会長・大橋一雄)