オピニオン

2020年11月1日

行動で法華経と日蓮聖人の教えを体現

 危機管理とリスク管理は違う。危機管理とは眼前に起こる事態が、破局と収拾の分岐点にあるとき、安定・収拾の方へ対応策を操作すること。後者は、近い将来に起こるかも知れないと予測される危険なことに対する備えをいう。
 埼玉県神社庁は、大勢の人出が予想される初詣の混雑時での新型コロナウイルス感染を防ごうと、感染症専門家の監修のもとガイドラインを作成し県知事に提出した。(9月24日『埼玉新聞』)
 同県神社庁では、9月から新年参拝に対し感染防止キャンペーンを開始。ポスターやチラシを作成しホームページでも呼びかけを展開している。全国に先駆けた取り組みに28都道府県の神社庁も賛同しているとのこと。
 参拝者を受け入れる側が感染対策を明示し来訪者も協力し互いに予防を徹底することは、安心して祈りを捧げられる環境の整備であり、リスク管理といえよう。
 小稿執筆の10月1日現在での公的機関における危機管理について、筆者が教誨師として携わる川越少年刑務所の対応を紹介する。同施設では3月中旬から6月上旬まで外部からの来所は中止となり、6月中旬より面接などを再開。収容施設に入る前に全身と手指の消毒を行う。面接時、教誨師はマスク、フェイスシールドを使用。被収容者もマスク着用の上、双方の間には、畳1枚ほどの大きさの、衝立タイプのシールドを立て部屋の窓と扉は開放する。千人近い人数が収容される閉鎖空間での感染の影響は大きく、予防対策は継続されている。
 次に別の角度からコロナ禍での取り組み例と課題をみてみたい。自粛生活あるいは他との接触を控えていた期間中に、筆者は人権擁護委員として「子どもの人権110番」電話相談員を担当した。
 テレワーク勤務とリモート授業で、家族全員がずっと家にいる状況下にあって、次第に親子関係がうまくいかず思い悩む母親からの相談があり傾聴。相談者は、インターネットでこの相談窓口を知ったというが、孤立化が進む社会の中には、相談する相手もなく、相談・傾聴の場があることを知らない人は多い。
 また、社会的認知が広がってきた「子ども食堂」は、厳しい感染防止対策が求められると同時に、人手や資金繰りの問題が生じ、存続が難しいところもある。
 他方『中外日報』(9月9日)、『朝日新聞』(9月19日)は、埼玉県川越市の日蓮宗本応寺と天台宗最明寺による取り組みを掲載した。2ヵ寺は、食品を集め配布する「川越こども応援パントリー」に会場を提供するだけにとどまらず、学習格差の解消をめざし、学習支援教室として寺院を開放している。
 ひとり親家庭等医療費、生活保護費などの受給家庭の子どもたちは、毎週お寺で学生や元教員、塾講師らボランティアの先生からマンツーマンで勉強することが可能となった。パントリーの圓岡徹哉代表者は団体設立当初から「貧困の連鎖を断ち切るためには学習支援が最も有効的だ」と考える。さらに協力寺院が増えることを願っている。本応寺の星光照師に話を伺うと「食料品も学習支援も必要とする人はもっといるはず」と歯痒さをにじませていた。
 身業説法とは我が身、己の行動で法華経と日蓮聖人の教えを体現することから現身説法とも称される。コロナ禍で岐路に立つ現代社会にあって、宗祖ならば今・此処で何を為されるであろうか。それぞれの場、その人でなければできないことがある。
(論説委員・村井惇匡)

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