2020年10月20日
■発酵・熟成
どんなに急いでいても、悪天候の中を飛行機は飛べない。同様に、待つほか為す術がないことは多々ある。雨の日の洗濯もそうだ。しかし今では乾燥機能付き洗濯機により晴れるのを待たずに洗濯ができる▼近代社会は効率という名の下に、「待つ」ということを克服しようと進歩してきたと言っても過言ではない。そして今やただ待つということは時間の浪費、悪徳だとさえ考えられるようになってきた▼たしかに、待つことが苦手な人は少なくない。赤信号をゆっくり待てない人、注文したものがすぐに出て来ないと文句を言う人など、イライラが蔓延し社会全体が刺々しくなってきたと感じることが間々ある▼しかし待つということは、本当に何もしないということなのだろうか。たとえば酒や醤油などの醸造では、麹の発酵を待つということは、何もしていないように見えても熟成を見守る非常に重要な期間である。子育てもそうだ。どんなに親が頑張っても、子ども自身が成長するのを見守り待つほかない▼久遠の本仏も、仏子である私たち衆生を救うため、待ち続けて下さっている。何もしていないのではなく、私たちを見離すことなく、たえず見守って下さっているのである▼コロナ禍の今、何もできないと嘆くのではなく、待つ=自身を練り上げ、その熟成を見守るという大事な時期だと思える生き方をしたい。(直)