オピニオン

2020年5月1日

振舞いを考える

 「不軽菩薩の人を敬いしはいかなる事ぞ、教主釈尊の出世の本懐は人の振舞いにて候いけるぞ、賢きを人と云い、はかなきを畜といふ」(『崇峻天皇御書』)
 日蓮聖人が身延のご草庵で、四条金吾に対し、法華経の信徒として賢き振舞いをするようにと諭された文で、謹慎中の短気な金吾に、自重して生活するようにとさまざまな指導をされたのです。大事な信徒である金吾を思いやる聖人のご心中が偲ばれ、人の振舞いを問う重要な御書です。
 令和の新時代になって丸1年、このようなコロナ禍の大変な時節が到来することを誰が予測できたでしょうか。感染拡大が止まらず、初夏の好季節とはいえ、先の見えない不安に戦々恐々の今、必ずやこの疫病は沈静化することを信じ、新緑と共に新しい1歩を踏み出しませんか。
 今の私たちにとって大事なことは、終息後の世界をどう生きるのかを考えることだと思うのです。
 これからは、どのような世界に生きたいのか、住みたいのか、新たな価値観を創造し、共有する機会は目前に迫り、人類は大きな岐路に立たされていることを自覚しなければなりません。
 医療関係者は命がけで感染阻止のため不眠不休で奮闘しています。一方では深刻に受け止めない人、何もしないほうが間違いはなくていいと過剰な自粛に向かう人など、難しい課題山積の中で総ての人が決断を迫まれています。感染による生命の危機、緊急事態による経済、生活の不安、感染拡大による人間関係の不信、長期化による心や家族の問題などに宗教はどう対処していけばいいのでしょうか。九州では、日蓮聖人ご在世の鎌倉時代に疫病退散のために仏教で始まったといわれる博多祇園山笠の中止が決定しました。もう疫病には宗教は役に立たないということでしょうか。仏教や寺院の存在意義が今こそ問われているのです。お寺は何ができるのかを試行錯誤しながら高齢者の安心のために法要行事は実施し、家庭でくすぶる子どもたちにはお祖師さまの絵本やアニメを配ったり、ささやかな取り組みを続けていますが、もっと大事なことがあるはずです。皆さまのご教導を願います。
 私の居住地は西九州の果て、人口15万人の島原半島です。ありがたいことにまだ感染者が出ていません。かねてより陸の孤島、限界集落といわれ、公共交通機関も減少し、交流人口も希薄な田舎です。都市部に比べると残念ながら近代化は遅れています。まだ自然と共生した生活をしている老人がほとんどです。だからこそ、感染の確率も低く、免疫力も多分強いのでしょう。幸福の基準も低いので、現状に不平不満をいう人も少ないようです。今後どう展開していくのか心配ですけど、危機感は共有していかなければなりません。まだまだこの疫病は続くでしょうし、自然災害、国内外の政情不安による紛争などいつ勃発してもおかしくありません。こんな時こそ、冒頭の日蓮聖人のおことば「人の振舞いにて候いけるぞ」を肝心として、不軽菩薩の人を敬う生き方、「いのちに合掌」を改めて自覚し、自身の振舞いを正さなければならないのです。
 地域社会の核として活動してきた本宗寺院は生き残りをかけて存在意義について考え直しましょう。幸福の基準を再確認し、家族、友人、国民とその価値観を共有していく社会を創生していくことに寄与していこうではありませんか。その基準のヒントはバブル経済以前の昭和40年代の日本人の生活にありそうです。50年前のその頃の私たちを思い出してみませんか。
(論説委員・岩永泰賢)

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