2020年3月1日
■オグリのセリフ
■オグリのセリフ
令和3年6月公演予定「日蓮」の主役にと私が熱望する4代目市川猿之助丈の「オグリ」博多座公演を観に行った。理由は地獄を説明するヒントを得たいがためである▼昨年の10月から、博多座の隣りのNHK文化センターで法華経の話をさせてもらった。聴衆は僧侶と他宗の一般人である。その中で「法華経の説く地獄からの救いを説明して…日蓮聖人の視点でなく」という日蓮宗僧侶にとって無茶ぶりに近い要請があった。提婆品にある、地獄に堕ちた堤婆達多の天王如来の授記を通しての救いを話してみたが、なかなか理解してもらえなかった▼「オグリ」は中世の説教節「小栗判官」を下敷きにしている。原作者は梅原猛氏。40年以上前『地獄の思想』で一世を風靡した哲学者・仏教学者である。時宗の開祖一遍上人をモデルにした遊行上人も登場させ、いじめや虐待など、現代風生き地獄を経験した若者が、堕ちた地獄で閻魔大王などと対決し、古い世界観を変えていくのがテーマの1つになっている。地獄も罰を与えるだけの場でなくて、何かに気づかせ人間を再生していく場にというのだ▼宗祖は、地獄への道を歩む末法の私たちに、本仏釈尊の教えの真髄を明かしていく有り様を示し、無間地獄に堕ちることがないようにと、『報恩抄』で述べられている▼猿之助丈の「人は幸せになるためにこの世に生まれてきたのだ」というセリフが胸に響いた。 (雅)