2019年12月20日
◆結構です
会議中、議論が白熱しているとき「この辺でコーヒーでも如何ですか」とすすめたとする。「結構です」という返答があった。これをどう受け止めるか▲結構という単語には、文字通り城やお堂を組み立てることなど、他にもいくつか意味があるが、今ここで問題になるのは申し分ない、つまりコーヒーを戴きたいという意味と、それとは反対にもう十分なのでいらないという意味があることだ▲正反対の意味を「結構」という単語1つで表すことができる。受け止め方を間違えれば、相手を軽んじているように思われて、好意が逆に相手の感情を害することにもなりかねない。ただ我々の日常の会話では結構という言葉の表面だけではなく「結構ですなあ、有難い」とか、「今はもう結構です」などという前後の流れ、さらに手振り身振りを交えて意思を伝えるので、滅多に間違えることはない。それにしても、同一単語が正反対の意味で通用するというのは、すごいことではないか。そこには相手の思いを忖度するという心が存在しているのである▲相手の立場に立ってこちらのとるべき態度振る舞いを考えるという在り方は、私たちの社会を支えてきた日本の心そのものといえよう。そしてその底辺には、人間は1人で生きているのではないという仏教の基本精神、合掌の心があるのだということを心にし、伝えていきたい。(直)