2019年12月10日号
インド洋津波15周年慰霊法要
「祈りは続く」高齢化で最後の式典に総長誓う
2004年に発生し、約22万人の犠牲を出したスマトラ沖地震から15年を迎え、タイ・プーケット島カマラビーチの慰霊之碑で、「世界津波の日」にあたる11月5日に中川法政宗務総長を導師にインド洋津波犠牲者の慰霊祭(主催=NPO法人プラジャ)が営まれた。同慰霊祭の法要は、発生翌年にタイ政府から全日本仏教会(当時の会長=藤井日光日蓮宗管長)に要請があり、毎年日蓮宗が続けてきたが、遺族の高齢化などの理由により最後となった。
当日は、日本人遺族をはじめ、プーケット県カトウー郡のソムパート・パプソンカーム郡長や世界仏教徒連盟(WFB)のパロップ・タイアリー事務総長ら約100人が参列した。妹夫婦を失った遺族の1人は「15年の月日が過ぎても、何も慰めにもなっていません」と悲痛な思いを語った。また弟家族5人が犠牲になった遺族の1人も「2年前に亡くなった父もこうして皆さんで慰霊をしていただき、喜んでいると思います。今回が最後となり寂しいですが、今まで本当にありがたく思っています」と述べ、今後も遺された家族で法要を営み、忘れないと心に決めていた。黙祷が捧げられた後、菅家弘道プラジャ理事長が挨拶に立ち、今まで法要を勤めてきた日蓮宗に謝意を表し、「最終の慰霊祭に皆さまと悲しみを共有したいと思います」と述べた。またソムパート郡長は「自然災害を避けることはできませんが、大事なのは手を取り合い、防災意識を高めること」と語り、パロップ事務総長は「数え切れない命が津波で失われ、惨状を目の当たりにしました。しかしその危機のなかで、国・人種・文化関係なく手を差し伸べてくれる人がいました。仏教徒として無常を教わりますが、一方で滅と生とどのように向かいあっていくべきか、智慧と安らぎのなかで学ぶ必要性を知りました」と追悼の辞で語るとともに改めて法要を続けてきた日蓮宗などに感謝を伝えた。
参列者の想いを聞き届けた中川総長が、碑の前に座し法要が開始。参列者が供華するなか唱えられた妙法蓮華経とお題目は、犠牲者を慰めるべく波のなかに溶けていった。
夕食会では、中川総長が「家族や大事な人を失った悲しみが癒えることはないでしょう。今日で式典は終わりとなりますが、私たちの祈りは続きます。だから安心してほしい」と言葉を掛け、遺族や島民らに寄り添った。またWFBから日蓮宗へ、今まで勤めてきた法要への感謝状が贈られた。