2019年11月10日
「奇跡のリンゴ」
あまたの病害虫と戦うリンゴ栽培で、絶対不可能と言われてきた自然栽培。だが、木村秋則さんは農薬どころか有機肥料も一切使わない▼家族の健康被害から無農薬に舵を切ったというが、無残にも木は病害虫に負け枯れてゆき、何年も無収穫(無収入)。周囲からの誹謗中傷。万策尽き、死んでお詫びをと山に分け入った。しかし、そこにこそ答えがあった。朽ちた落ち葉や枯れ枝を微生物が分解して土を作る自然界。小さな命それぞれが密に活動していた。本来、無意味な命、邪魔な命などなく、あらゆる命は互いに生かされて生きている▼木村さんは畑の下草刈りをやめた。すると、土中が適温になり、バクテリアや草根に菌類が集って養分を蓄えた。木はそこに根を巡らせ元気になってゆき、虫喰い葉・病葉もリンゴ自身が落として防御。葉ダニがいても、それを食べるダニもいて、更にそれを食べる虫、虫を食べるカエル、イタチやウサギも…。自然の絶妙なバランスが築かれるまで試行錯誤の11年。無数の命が調和して実らすリンゴは腐らなかった▼木村さんは言う「人間も一生物に過ぎません。木も動物も花も虫たちも皆兄弟です。互いに生き物として自然の中で共生している。人間はもっと謙虚であるべきだと思います」▼今年も真っ赤なリンゴをいただいた。仏さまにお供えせずにはいられない、心から手を合わせた。(花)