オピニオン

2019年10月10日

「よみがえれ!父性」―お父さんの存在とはー

 人間は、感覚情報として1秒間に400億ビットの情報を脳に取り込んでいるらしい。そして自分のほしいと思う情報を瞬時に分別し、取り入れるという能力を持っているのだ。自分自身にすりあわせてみると、「子ども」「教育」「宗教」というカテゴリーの情報を無意識に多く取り込んでいるという実感がある。子どもが、子どもらしく幸せに生きられる時代を考えていこうと思っているからであろう。しかし、今月もニュースは「虐待による子どもの悲しい死」を大きく取り上げていた。
 「ママ もうパパとママにいわれなくてもしっかりとじぶんからきょうよりかもっとあしたにはできるようにするから もうおねがいゆるしてください おねがいします ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして きのうぜんぜんできなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめる もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします もうあしたはぜったいやるんだとおもっていっしょうけんめいやる やるぞ」
 これは、父親の虐待で亡くなった5歳の女児の残したメモである。発達の過程においてこの年頃の子どもは、あそびを通した経験によって成長し、知識や情報の伝達方法を広げ、より社会化し、人間関係の広がりや深まりを培っていく。それに伴って文字に対する興味が増し、どこにでも自分の名前を書きたがったり、大好きな友達や関わる人に絵だけでなく文字で気持ちを手紙として書いたりする姿が見られることが特徴である。
 しかし、このメモの内容からは、実に閉鎖的で自虐的で逃げ場のない子どもの心情が悲しいほどに伝わってくる。5歳という小さな体に、振り上げた父親の拳はどれだけの恐怖であったか。目に見える父親は存在しているが、父親として内在していない家庭が増えてはいないだろうか? 
 すべてではないが、虐待した父親のほとんどが何かしらの経済的、社会的な困難を抱えており、一般的に理想とされる父親像でないことを父親自身が自覚している。そこで、何とか父親としての存在を示し、父親の役割を果たさなければという思いが、ゆがんだ行動として「しつけと称して」という虐待につながっているように思えてならない。
 仏教では、慈悲(思いやり)を説く際に慈を父性、悲を母性として考える。苦しみを共感し、受容しその苦しみを取り除こうとする母性の悲と、幸せを与える智慧を授ける父性の慈が合わさって、幸せに導かれるのだ。しかし、慈悲の欠落、母性と父性の未成熟が、このような事態を生み出してはいないだろうか? 
 本年、理化学研究所が出した調査では、子どもを虐待したとして服役した親たちのうち、72%が自分の子ども時代に虐待を受けていたことが報告されている。世のお父さんに申し上げたい。「よみがえれ!父性」今一度お父さんの役割を考えてほしい。お釈迦さまは、法華経の中で世の父であることを明かした。この父としての役割は、安穏な(幸せな)世界づくりは、力で抑えることでも力で奪うことでもない。父であるお釈迦さまの姿を引き継ぎ、大きな慈愛で智慧を授け、リーダーシップを持って導いていってほしい。子育ては伝承である。虐待を連鎖させてはいけない。
(論説委員・早﨑淳晃)

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