2019年9月10日
おはぎの相続
芒を飾り、果物や栗など秋の味覚をお供えする十五夜。我が家では、昔からおはぎもお供えする。最近は買ってきたもので済ませていたが、以前は母が手作りしていた▼10年ほど前、腰を痛めた母を手伝ったことがある。餅米を炊いて潰し、柔らかい俵形にし、アンコはざらめ砂糖で炊き上げて大きな小判形にする。左手いっぱいの大判アンコ、その上に右手で俵おにぎりをのせると、母は両手の指を器用に動かし包み上げてゆく。つぶ餡がツヤツヤ光る、握りこぶしほどもある大きなおはぎだ。私も真似てみるも上手くはいかなかった。「母さんは、誰からこのおはぎを習ったの?」母「お祖母ちゃんが作っているのを見て覚えたんだよ。うちは貧しかったけれど、農家だから米と小豆はあった。だから、お祖母ちゃんは大きなおはぎにして十五夜にも仏さまにもお供えして拝んだのよ」▼祖父母にとって、大きなおはぎは贅沢なごちそうだったのだ。信仰心が篤かった祖母のせめてもの供養の真心が、母に受け継がれたおはぎだった。母も、折にふれ、おはぎを作ってお供えして拝んでいた。今では高齢で台所に立つことも出来なくなってしまったけれど…▼そうだ、この十五夜は、私がおはぎを作ってみよう。母のようにはできないかもしれないけれど、精一杯の真心を込めて。そしてお彼岸には、祖母にもお供えしようと思う。(花)