論説

2019年7月20日号

青少幼年の心を育てる

 夏休みに自坊で「てらこや修養道場」を開催しています。「合掌のこころを未来に」をテーマに今年で14回目。檀信徒や近隣の青少幼年約25人が集い、スタッフ・付き添えを含め40人が参加します。
 午前10時の開会式につづき、初めに「静」の修行です。呼吸法や座り方など基本を説明して坐禅に入ります。肩や背中に警策(きょうさく)を与えると、落ち着かない子どもたちも真剣になります。精神統一の瞬間です。日蓮宗の修行でも静かに心を見つめる禅定行は大切です。次に「動」の修行です。仏前作法や太鼓練習、唱題行をします。左進右退の歩き方や合掌の仕方、お焼香の仕方など実習します。この時、檀信徒の信行会のメンバーが指導します。大太鼓と平太鼓の5グループに分け、バチの持ち方や太鼓の打ち方を教えます。太鼓の音が響くと躍動的になりお題目の声も次第に大きくなります。胎児が母体で聞く心音が1本バチの大太鼓の音に似ていると研究発表したことがありますが、まさに太鼓の響きは「いのちの音」です。
 その間、付き添いとスタッフで昼食の準備をします。毎年、境内の竹を使って流しそうめん台を手作り。そうめんと一緒に果物や野菜も流します。7㍍ほどの竹を両側から向かい合いながらの流しそうめん。夏の風物詩に子どもたちの連帯感も高まり本当に楽しそうです。
 昼食後は、付き添いも加わり合同で工作。貯金箱やペン立、宝石箱など工作キットを準備し、釘やボンドで組み立てます。各自絵の具で彩色し、スタッフが透明ラッカーで仕上げます。作品は夏休みの自由課題になるので好評です。レクリエーションはスイカ割りです。年齢別に歩く距離を長くしたり短くしたり、体を回転させるなどして盛り上げます。声援も次第に大きくなります。閉会式では、太鼓に合わせて唱題行を行います。修了証を授与したあと集合写真を撮り16時ごろ解散します。子どもたちにとって楽しみながら、仏さまを身近に感じる1日です。
 「てらこや修養道場」の特徴は、第1に親子で参加することにより信仰が家族に広がること。第2に参加対象を年長~小学6年とすることにより兄弟姉妹や友だちの参加が増えること。第3にスタッフの檀信徒にも修行の場となること。第4に付き添い同士の意思疎通ができることなどが指摘できます。なお、今年からOBがスタッフの補佐として参加します。
 現在、日蓮宗では日蓮聖人降誕八百年慶讃事業として、「合掌の心」を社会に広めるため、布教現場活性化のノウハウを学ぶ研修会を開催中。また寺門を広く社会に開放する寺フェス活動など社会に向けての活動を推進しています。さらに全国防災情報サイトへ日蓮宗寺院の地域防災情報を掲載し「社会貢献する日蓮宗」を発信し、日蓮宗を広くアピールするブランド化事業を進めています。
 今、日本社会の世相を見るとき一番求められるのは、宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」の目標である「敬いの心であんのんな社会づくり・人づくり」ではないでしょうか。日蓮聖人降誕八百年慶讃事業では前述の事業に加え「青少幼年教化寺院800ヵ寺推進事業」を進めています。すでに500ヵ寺以上が計画中との調査結果(令和元年7月現在)ですが、今後は、その実働に向け大いに期待したいと思います。全国の日蓮宗寺院で、青少幼年を対象とした「寺子屋」や「修養道場」が展開されれば素晴らしいことです。初めは難しくてもまずは実践しましょう。試行錯誤を繰り返しながら、各自坊に最適な内容が見つかります。未来の安穏な社会づくりの第1歩は、「人づくり」からです。    
(論説委員・奥田正叡)

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2019年7月10日号

宗教回生時代へ向けての立正安国・お題目結縁運動

 佐渡霊跡参拝
 5月の末に、日持上人顕彰会主催の佐渡霊跡参拝旅行に参加した。ウィークデーであったためか、静寂なたたずまいの中でのご霊跡の各山をゆっくりと参拝させていただくことができた。
 極寒の地で2年半の間、過酷な日々を過ごされながら、『開目抄』『観心本尊抄』という日蓮聖人教学の根本義の書を著された気魄に触れられたような思いで、感激の参拝であった。
 来年の令和2年は、聖人佐渡流罪七五〇年になり、その翌年は降誕八百年になる。これらの記念の年を迎えるに当たって、佐渡霊跡を参拝できて、本当にありがたかった。
 日蓮聖人は『開目抄』の中に「日蓮といいし者は、去年九月十二日子丑の時に頸はねられぬ。此れは魂魄佐土の国にいたりて返る年の二月雪中にしるす」と、書かれている。
 思えば、開・本両抄は聖人の本化上行菩薩ご再誕としての魂の叫びであったのだ。その中で聖人以前の大論師、大人師が示されなかった三大秘法を発表されて、末法の人類社会救済の大法をお示しになられた。
 本門の教主釈尊・ご本仏を閻浮第一の御本尊とされ、立正安国・立正世界平和の仏国土顕現を目ざして、南無妙法蓮華経のお題目を唱えることであるとされた。
 いのちのみ親への開目
 折しも佐渡霊跡参拝の頃、引きこもり者による殺傷事件が起きた。それをきっかけに、「ひきこもり者」の問題が社会問題として取り上げられてきている。
 ひここもりは、青少年や若い人たちのことだと思っていたが、今や40歳から64歳までのひきこもり者が多くなり、その数は全国で60万を超えるといわれている。
 その中高年のひきこもり者の面倒を見ているのは高齢の親で「8050問題」として深刻さを増しているといわれる。
 私たち人類は、いのちのみ親ご本仏さまに、「世のため人のため立正安国のためになって、天命を全うし、幸せに生きています」といって、尊いいのちをいただいてきたことを忘れてはならない。
 いろいろの方面の人たちが、このひきこもりの社会問題に取り組んでいると聞く。
 私たちお題目を唱える者も、このひきこもりの人びとが、ご本仏さまとの約束に魂を目覚めさせるお手伝いをさせていただこうではないか。それにはそういう人たちの魂にお題目の光を当ててもらうことだ。立正安国のお題目は、人類覚醒のお題目であるからだ。
 立正安国・お題目結縁運動
 今は宗教なき時代といわれ、あるいは宗教離れの時代、宗教衰退の時代ともいわれている。大いなるものご本仏さまに生かされているという宗教心が欠如しているように思えてならない。いろいろな社会問題が発生してきているのは、この大いなるものご本仏さまに目を開けという警鐘ではないだろうか。
 私たちの生きているこの娑婆世界は、物質界だけではない。精神界を含めて、三千世間という係わりの中で営まれている世間である。それに私たちのいのちは、ご先祖さまとのつながりの中で、戦争犠牲者や原爆犠牲者、テロや天災地変の犠牲者たち、また多くの人びととのつながりの中で生かされているいのちである。
 立正安国・お題目結縁運動はこの三千大千世界に目を開いて共に生き共に栄えていく一大宗教運動である。
 日蓮聖人降誕八百年は、人類救済のお題目を広めるために、この世にお生まれになられた聖人の本願を顕現する時だと思う。
 宗教衰退時代を宗教回生時代へと転回させていこう。
(論説委員・●刀貞如)

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2019年7月1日号

道徳の学校教科化について

 新年度に入った頃、公立中学校で全校生徒を対象とする講演を寺の住職として行う機会を得た。この講演は、筆者が所属する人権擁護委員協議会に申し込まれたものであった。
 同会では、1市5町1村の公立小中学校に対し、思いやりの心を育てる「人権教室」の実施を呼びかけてきた。ここに来て講話の依頼が相次いだ理由の1つに、今まで学校教育では教科外活動とされてきた道徳の教科化の影響があるように感じた。
 事実、当該学校で渡された打ち合わせ資料には、【思いやりの心を育てる「人権教室」~道徳科~】と表題がつけられ、【ねらい~外部の方に思いやりの心を育てるための話をしていただき、道徳実践力につなげる】と記されていた。
 担当教諭からは、学校生活が始まり1ヵ月を経た時にあたり、新入生や新たにクラス編成された在校生に、他者への思いやりのある接し方や言動についてヒントとなるような話を要望された。住職の話を聴いた生徒が、自ら考え行動へと結びつく内容が良いとのことであった。
 筆者は、複数の公立中学校で、道徳科を用いた教育、さらには子どもたち自身による実践道徳のあり方について教諭たちが互いに意見を交え工夫を重ねる姿を見ることができた。あたかも、新たな教科となった道徳科のカタチとココロを育むさまを垣間見るようであった。
 「道徳の教科化」案は、平成25年2月に第2次安倍内閣が立ち上げた教育再生実行会議で「いじめの問題等への対応について」と題する第1次提言の中で示され、学習指導要領改正に導入された。ただ、道徳の授業に対しては、特定の価値観の押し付けにならないかといった危惧や批判の声が報道されたことを記憶する。 
 平成30年3月28日、筆者の地元紙「埼玉新聞」では、紙面の大半を割いて平成31年度から始まる中学校での道徳に関する記事を掲載した。中でも、教科書や授業で扱う内容項目が厳密に定められていることを指摘し、指導の硬直化につながるのではないか懸念していた。
 令和に入った5月17日、宗教界の新聞である「中外日報」の社説では、道徳の教科化を取り上げ、学校教育法施行規則第50条などで、私学においては「道徳」に代えて「宗教」とすることができる点を記している。社説執筆者は、「検定教科書による国公立学校の道徳教育と、独自教科書による宗教系私学の宗教教育は、同じ『特別の教科』という枠内で対比して考察することも必要になるだろう。多様な宗教教育が公的な道徳教育の適正さや歪みを照らし出す鏡になる可能性も考えられなくはない」と述べていた。
 日蓮聖人は、世情の在り様を常に仏典に鑑み、仏眼をもって衆庶の善導教化の基となされた。今の世に生きる私どももまた、法華経やご遺文という「明鏡」に自己と他者、そして取り巻く世界を映し観ることを忘失してはならない。
 あらためて冒頭に紹介した公立中学校の取り組みは特例であることに気づく。日々、教育の現場で生徒と向き合う教諭たちが道徳科教材にとらわれず外部講師を招くことを企画。人権擁護委員という公職を持つとはいえ、一宗派の住職を講師に迎えることは容易なことではなかっただろう。
 徳の原字は悳であり彳印を加え、すなおな本性(良心)に基づく行いを示す。道徳科の柱は「どう考えるか」だという。誰を見つめ、いかに考え、どう行動するか、「明鏡」を持たねば道を誤る。
(論説委員・村井惇匡)

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新年のご挨拶。

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    中尾堯著
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    日蓮宗新聞社編
    日蓮宗新聞社
    定価 826円+税

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