2019年4月20日
1人の僧侶を、1人の教学者を育てよう
春4月、桜花爛漫の季節に全国各地で入学式が行われた。身延山大学でも4月3日に入学式が行われ、23人の新入生、編入学生が入学した。身延山大学は1学年定員30人の小規模校で、仏教に特化した大学である。全国に私立大学は600余校あり、そのうち約4割が定員割れ、大都市圏以外の私立となると、それは約6割となる。
定員割れの続く大学はその経営に四苦八苦しながら凌いでいる。身延山大学も例外ではない。身延山、日蓮宗宗務院からの多額の助成金をいただいて今日まで生き延びている。
明治6年(1873)2月24日、明治政府は、太政官布告第68号をもって「キリシタン禁制の高札」を撤去、キリスト教はこの前後から日本において教育・医療・育児事業に関わり布教戦略を展開した。殊に教育に関わってキリスト教の伝道を目的とした教育機関をミッションスクールという。
ミッション系にあってその先駆け的主な教育機関をあげると、旧教では、聖モール会が東京・横浜・静岡に女子教育を開拓して双葉学院。イエズス会は東京・神奈川・神戸に上智学院(現上智大学)・栄光学園・六甲学園等を創立している。新教では、米国メソジスト監督教会が東京英和学校(現青山学院大学)・関西学院。ジェームス・カーチス・ヘボンはヘボン塾(現明治学院)。新島襄は同志社英学校(現同志社大学)を創立している。
このなかにあって、プロテスタントの牧師を育てる目的で明治学院・青山学院・東北学院などの神学部を統合して設けられたのが、昭和24年に設立された東京神学大学(東京都三鷹市大沢)である。1学年の定員20人、神学部神学科のみで大学院を有している。
近年の学生募集状況を見てみると、昨年の入学者数は、新入学が2人、編入学が12人の計14人、収容定員80人のところ47人、充足率は58・8%(大学院は収容定員60人、充足率76・7%)となっている。
学部生の充足率を見ると、身延山大学よりも低い。東京神学大学は、7年に1度ある大学認証評価において見事に「適合」を獲得している。何故なのだろう。確かに充足率改善の指摘は受けているのだが、頗る健全財政なのである。
経営母体は日本基督教団。系列の大学には、東北学院・青山学院・明治学院・関西学院・西南学院等の大学があり、その傘下には高校・中学が存在する。これらの教育機関の神学担当教員に東京神学大学の出身者が配置されることが多いようである。
キリスト教徒は、仏教でいう「布施行」を献金という形で善意を他者に顕している。伝えるところでは、キリスト教徒は年収の3%から5%を教会へ献金するという。東京神学大学には、日本基督教団の献金のメンバーが国内外に数多く存在し、その数は6千人強となっている。この後援会の人らが、「1人の牧師を、1人の神学者を育てるために」と進んで献金をしている。身寄りのないメンバーは亡き後は「不動産などを大学に献金」と認めるという。東京神学大学のホームページには後援会への勧誘、税制上の優遇措置が詳細に記載されている。
今の日本、少子高齢化社会にまっしぐら、この状況にあって向後の仏教界、日蓮宗は深刻な後継者不足、教学者不足に陥ることは避けられない。現に近年、信行道場入所者数は100人を切り、大学院にいる学生も減少している。380万人といわれる日蓮宗檀信徒の1%の方が「1人の僧侶、仏教学者を育てるために」という行動を身延山大学、立正大学仏教学部にとっていただければありがたい。
(論説委員・浜島典彦)