ひとくち説法
2019年3月10日
「身近にいるほとけ」
今年も雪が多い年だった。雪国の人はご存知だろうが、暖かくなると道路の雪も緩んでザラメ状になる。その結果、車はまるで砂の上を走っているような状態になり、タイヤが道路にできた溝にはまって動きが取れなくなることもある。
お檀家のお勤めを終えた自分の車もその状況に陥り道を塞いでしまった。まもなく大きな車がそばまで来た。運転者がおりてこちらに近づいてくる。見るからに強面の、私たちとは違う世界の人という感じの人だ。「まずいな」と思ったが、その方は「こりゃ、だめだな」というと、車の後ろに回って押し始めてくれた。ようやく溝から脱出することができた。見るとその方のズボンはタイヤに飛ばされた雪に汚れていた。深く手を合わせ、お礼を述べたのは勿論だが、一瞬、外見でその人を判断した自分を恥じた。
どんな人にも仏になる種があり、導くほとけさまは身近にいると感じることのできた出来事だった。
(北海道南部布教師会長・山本光明)