オピニオン
2019年2月10日
天人常充満
ごめんなさい。病気をなおしてあげられなくて
ごめんなさい。ひと声かけられなくて
ごめんなさい。なにもできなくて
30数年間も大黒さまを拝んで、一生懸命信仰してきたSさん。1年前、3月の頃です。
1本の電話が鳴り、肺がんで余命幾ばくもないと知り病院へ。私に最後のお願いがあると。死ぬ前に大黒さまをお納めいただきたいとのことだ。
ベッドに上半身起き上がり、背中に枕をあてて私を待っていた。鼻には酸素吸入のチューブ。左胸の上にもあり、顔も体も痩せ衰えていて驚いた。小さな声で目には涙が溢れ、「お上人さま、ありがとうございました」と御礼を言われました。私はSさんの手を両手でギューッと握りしめ、南無妙法蓮華経とお題目を唱えて最後のお別れをしてきました。ふっと振り向くと、大きな窓の外は白い粉雪が舞っていました。私には天人が白い花で待っているかのように見えました。(青森県布教師会長・藤本胤尚)