オピニオン

2018年12月1日

法華経の行者たらんと志す

平成19年に始まった宗門運動「立正安国・お題目結縁運動」は、あと3年半ほどで区切りを迎える。
この運動の特徴の1つが、「妙法蓮華経常不軽菩薩品第二十」に説かれる、常不軽菩薩の但行礼拝(ただひたすら人を敬い続ける)という行動に根ざしていることにある。そしてそれは、法華経と日蓮聖人の教えの根本であるから、運動が終わっても不断に行じなければならない宗教的実践項目(理論・理念ではなく現実に実行すべき事柄)でなければならない。こういった観点から少し考えを進めてみたい。
日蓮聖人が身命をかけて打ち立てた教義教学、実践は、広大で深遠なだけでなく、宗教的重要概念も多い。そのため、700年以上の歴史の中で、多様に展開したり、逆に集約されたりして今日に至っている。教義教学、実践の多元的状況が続いていると言ってもいい。
そんな日蓮聖人の教えの中で、実践的に最も重要なものの1つが、「法華経の行者」という聖人独自の基本姿勢である。すなわち、妙法蓮華経という経の中に自らの立ち位置を定め、法華経そのものを主体的に生きようとされたのだ。
もちろん、法華経には、虚空会(空中に浮かぶ多宝塔の中から教えが説かれる)や恒河沙(数の単位でガンジス川の砂の数)などの神話的とも言える部分もあるから、そっくりそのまま、法華経の通りに実践することは不可能だ。しかしながらその中には、現実に対応する教説が多く存在するのも事実であり、聖人はそこに着目されたのだ。
ただし、漠然と「法華経の行者」と言うと、法華経の行者=日蓮聖人という図式が浮かび、法華経の行者という言葉が聖人の自覚に由来するにもかかわらず、聖人を讃える宗教的讃辞として用いられ、私たち後世の日蓮宗徒に直接関わるものではないようにも感じられてきた。
しかしそれは本来、後世の日蓮宗徒が法華経の行者たらんとすることを否定するものではないのではないか。
特に、聖人が『聖人知三世事』の中で、「日蓮は是れ法華経の行者なり。不軽の跡を紹継するの故に」と述べておられることに注目したい。自らが法華経の行者たる所以を、常不軽菩薩が貫いた但行礼拝の事跡を引き継いでいるからだとされている。
よって、常不軽菩薩の但行礼拝を現代的に適用し、「いのちに合掌」をスローガンに、「敬いの心で安穏な社会づくり、人づくり」を目標に展開してきた現在の運動は、「不軽の跡を紹継するの故に」、法華経の行者として取り組む信仰運動と言えるのではなかろうか。
法華経の行者となって但行礼拝の精神を持ちつつ、敬いの心を現代社会の中で具現化していかなければならない。数度の流罪などの法難は、現代の私たちでは耐えられるはずもなく、聖人が法華経の行者として残された事跡の一分にも満たないとしてもだ。
私たちは、現在の運動が、平成34年3月に、一応のけじめを迎えても、但行礼拝の精神を忘れてはならず、法華経の行者としての誇りを実現していかなければならない。
誤解しないでほしいのであるが、次期の宗門運動でも但行礼拝を軸に行うべきだと言っているわけでは決してない。それは、その時の指導的立場の方々が決めることだ。そうではなくて、あと3年半続く現在の運動の中で、より深く但行礼拝の精神を身につけ、それ以降も法華経の行者たらんと志していただきたいと願うだけなのである。(論説委員・中井本秀)

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