オピニオン
2018年11月20日
いろはにほへと
幼少の頃、師父に暗唱させられた「いろはにほへと」の歌。「色は匂へどちりぬるを、わが世誰ぞ常ならむ、有為の奥山今日越えて、浅き夢みし酔ひもせず」。これを訳すと「色美しく咲き誇っている花も、やがては散ってしまう。この世に生きる私たちとていつまでも生き続けられるものではない。有為、すなわち因縁により生じたさまざまな煩悩の心の山を今日越えることができた。もはや悟りの世界に至れば煩悩の酒に酔うこともないのである」。私たちは移ろいゆく人の世を生きて、楽しい出来事に出会ったり、苦しいと思えるような局面を迎えたりする。そうした生活の中で、お祖師さまは「苦をば苦と悟り楽を楽と開き、苦しくても楽しくても南無妙法蓮華経を唱えて生きていきなさい」とお示しになられている。今一時でも、人や仏とともにこの世で生かせていただけることに感謝の心を忘れてはならない。「いろは」の歌を教えてくれた師父に「感謝」。
(長崎県布教師会長・今泉智薬)