2018年10月20日
「客を何だと思っているんだ。」
「客を何だと思っているんだ。」電話の向こうから聞こえる怒鳴り声。悪口雑言が続いた、と知人が語る▼商売上の打合せで何日の何時に連絡すると約束した。そこでその時間に電話したのに応答はなく、日を改めてと思っていたところに、本人から電話があった。連絡がないのはどういうわけかと言うので、約束の時間にかけてもつながらかったと言った途端、凄まじい剣幕でまくしたてられたという▼自分が電話に出なかったことにはまったく触れず、まず連絡できなかったことを詫びるべきではないかと一方的にののしり、挙げ句は誰のおかげで生活できているんだ、客のお金があってこそだろうとまで言う。「悔しい、何とかあの人物をギャフンと言わせたい」と憤る彼▼瞋りは修行を妨げる三毒の1つであるが、その根源は自分こそが正しいと思い込むところにある。どう行き違ったのか、約束が守られなかったと非難する客。それに対し「ギャフンと言わせたい」と憤慨する彼。どちらも自分が正しいと思うから腹を立てるのである▼正義を主張し、その結果苦しんでいる人たち。これこそ修羅の世界である。どちらが正しいかと争っても互いに傷つくだけだ。正義の応酬より、手を取り合って助け合い励まし合う世界のほうがどんなにか素晴らしいことだろう▼どこかの国同士の争いも、まずどうすれば助け合えるか考えるべきである。(直)