ひとくち説法
2018年8月20日号
伝えよう、親から子へ
先日の法事でのことです。若いお母さんが幼いお子さんと手をつないで、ご宝前にお焼香に進まれました。お母さんが合掌して礼拝されます。それをお子さんがジッと見上げています。するとおもむろにお母さんを真似て合掌礼拝するのです。お焼香を終えたお母さんは、お子さんを抱っこしてお焼香をさせ、また2人で合掌です。唱題中に何とも微笑ましい光景を目の当たりにしました。
「母が拝めば子も拝む うしろ姿の美しさよ」。これは、ある温泉旅館の床の間に掛かっていた掛け軸の詩です。私は母の後ろ姿の美しさと理解していたのですが、この時に思ったのです。「あの詩は合掌する親子2人の後ろ姿の美しさを詠んだものに違いない!」と。
「子どもは親の言うことは聞きかないが、親のすることはする」。よく言われることですね。大切なことを我が振る舞いを以って伝えていきたいものです。
(島根県布教師会長・蔵本知宏)
2018年8月10日号
吉田松陰
今年は、明治維新から150年を迎えます。吉田松陰は長州の萩で、私塾・松下村塾を主宰し、わずか1年余りで多くの人材を育て、明治維新を推進しました。その松陰の中心思想が『草莽崛起』です。『草莽崛起』とは、「大きな目標に向かって志ある人が雑草のような強さで立ち上がれば、この世が改革できる」という思想です。松陰はこれを日蓮聖人に学び、多くの志ある人、至誠の人を育てたのです。
日蓮聖人は、「妙法蓮華経」の教えが、すべての人びとを救う最高の教えであると確信され、「南無妙法蓮華経」のお題目を勧められました。お題目の修行をしている私たちは、法華経の教えを実践しなければなりません。自分のため、家族のためだけではなく、すべての人の安らぎを願い、お題目をお唱えする。この輪を繋げ、広げていくことが、日蓮聖人の意志を受け継ぐ、私たちの大事な役目なのです。
(山口県布教師会長・藤井慎一)
2018年8月1日号
彼此愛憎の心
本年6月に、北朝鮮とアメリカとの会談が行われた。朝鮮半島の非核化が会談の本題だというが、どうだろう……。相方ともにお互いの足元を見ながら、自らの利益を最優先させる姿勢が見え隠れする。そこには、心からお互いを尊敬し、平和を愛するということがあるのだろうか。
「法華経第五薬草喩品」の一節に、「我、一切を観ることをあまねく平等にして、彼此愛憎の心あることなし」とある。しかし、この世の中は、「彼此愛憎の心」に満ちているではないか。
自らを愛するあまりに他を憎み、自らの利益のために他者を犠牲にする。自分自身をすべてにおいて無き者と考えられぬところに、人間の愛情の限界を感じる。人間としての性(さが)である。
「若しは信、若しは謗、ともに仏道を成ず」と、「開経偈」にあるが、仏陀の慈悲は、法を謗る逆縁をも包む大慈大悲なのである。
「法華経の心」はそこにある。
(広島県布教師会長・難波典基)