オピニオン

2018年8月10日

維新150年、宗教と政治を問い直す時

今年は明治から数えて、まる150年となる。
維新150年との見出しを目にするが、世間のこれに対する関心は、そう高くはない。
まさに明治は遠くなりにけりとの感を強くする。
これに較べれば、明治100年を迎えた昭和42年の頃には、時代のエポックとして国中が大騒ぎしたような記憶がある。
日本という国が敗戦という悲惨な状態から立ち直り、高度成長という時代に入ろうとしていた時のことだった。
当時、20代の半ばだった私は、「よし、俺たちも維新の志士に倣って頑張ろう」との意欲に燃えたものである。
個人的な思いは、さて置く。
今年のNHKの大河ドラマが「西郷どん」なのは、これを記念してのことだろうか。
このドラマが前半を終え、いよいよ後半に突入するという時、明治維新に関しての意識調査と対談の番組が放映された。
驚いたのは、そのことに対する現代人の関心の低さだった。
例を挙げれば、「岩倉具視を知っていますか?」との問いに「倉を造った人ですか?」と若い女性が答えたのには、驚くというより笑うほかなかった。
昔なら、500円札の肖像画に起用された岩倉氏だから、説明のしようもある。
だけど、500円が札を消してしまった今となっては、説明に苦しむのである。
昭和59年、聖徳太子に代わって1万円札の新しい顔として登場した福沢諭吉さんが、いつ、いかなる日にか、これからの時代には、ご用済みという形で姿を消される日が来るのではないかとの不安を感じたものだ。
今や、私が懐かしいと思っている聖徳太子が、お札のシンボルのように絶対的な地位を占めていたことを知っている人が少なくなっているのは、悲しいかな現実である。
だけど、知っておいてほしいと願うのは、太子が我が国で初めて憲法というものを制定した人。そして、その第1条には、「和を以て貴しと為す」という言葉が記されていることだ。
しかも、その後には、「篤く三宝を敬え。三宝とは仏・法・僧なり」との条文が続いていることも忘れてはなるまい。
太子は仏教、ことに法華経の教えに精通していたのである。その教えを以て、国造りを考えていただろうと推測できる。
これに反して、150年前に成立した維新政府は、王政復古の掛け声の下、国家神道を確立せんがために、廃仏毀釈という政策を断行して、仏教教団に大きな弾圧を加えたのである。
これは仏教が我が国に伝来して以来、初めて遭遇したとんでもない出来事だったと考えてもよいのではないだろうか。
とにかく、日本の近代化という大きな歴史の流れの中にあって、見逃されがちだが、これを阻止し、宗派を超えて仏教界を守った当時の先師たちの活動に目を向ける必要がある。
宗教と政治、この2つの立場は異なるものの、非常に緊密な関係にあることは、現代に到るまで、世界の歴史が証明しているではないか。
戦後の政教分離の考えが間違っていると言うつもりはない。しかし、その間、仏教界は指導力を失い、歴史の流れから離反してしまっているのは事実。
維新150年の後には、元号も改まり、新しい時代となる。
そして私たち日蓮宗宗徒は、間もなく日蓮聖人の降誕八百年という聖年を迎えることを肝に銘じなければなるまい。
日蓮聖人は常に歴史の現実と向かい合っていた方だからである。
(論説委員・中村潤一)

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