2018年8月10日
お盆が来ると決まって思い出す絵がある
お盆が来ると決まって思い出す絵がある。両親に連れられてお参りした本堂に掛けられていた、「地獄絵」だ。鬼の獄卒が亡者を責め立てる、あの絵だ。シニアの方ならば1度は見たこともあろう。50年たってもありありと思い出せるほどに記憶に残っている▼近頃各地でその絵を飾って、住職が説明する催しが開かれて人気だという。また、怪談話を聞く会も盛況のようだ。プロの落語家もいれば、話の得意な一般の話し手や僧侶もいて、好評だという。怖いもの見たさが興味を引くのであろうか▼現代から暗闇が消えたことで、「おそれ」が消えたといわれる。1人で暗い夜道を歩いているといつの間にか忍び込む「怖い」という感情。犯罪に結びつく恐さ。それとはまた違う世界。何がというわけではないが、恐怖とはまた違う次元のものである▼「おそれ」とは、尊さの先にある畏怖の感情とでも言えようか。目には見えない何か恐れ多い尊さ。その思いが今は見失われてきている。その結果、傍若無人なおそれを知らぬ所業となって表れてくる▼争いはこわさ、おそれ多きことを忘れたときに起こってくるという一面がある。今までの2度の大きな戦争も、畏怖の心を忘れた些細なことから始まったと言えなくもない。改めて敗者勝者、お互いが加害者であり被害者であることをこの8月には考え、平和の尊さを思う日々を迎えたい。 (汲)