論説

2018年7月1日号

仏縁を結び地域社会で存在を

 人は老いも若きも幼きも、他者から頼られ当てにされ、喜びを伝えられると自己の存在価値を確認できる。また、家庭や学校、職場、地域社会に居場所が在ると心身に安らぎを得られる。
 犯罪や非行をした人の社会復帰には、安定した就労の場と住居の確保が大切な条件となる。
 僧侶・寺族・檀信徒の中には、保護司・更生保護女性会・協力雇用主・BBS会(問題を抱える少年と接し成長を助ける青年ボランティア団体)の一員として更生保護の活動に携わる方も少なくないだろう。
 今年5月7日付『朝日新聞』(夕刊)では、刑務所からの出所者を支えるNPO法人「マザーハウス」の五十嵐弘志氏が紹介されていた。氏自身も両親の離婚を機に中学時代から非行に走り、前科三犯、20年近く服役した元受刑者である。
 氏は3回目の服役前に拘置所で聖書を読み、「なぜ罪を犯すのか」と問われている気がして、己のしてきたことが怖くなったという。修道女に手紙を出すと親にも絶縁されていた自分に会いにきてくれた。初めて1人の人間として見てくれる人に出会った、と語る。
 マザーハウスを開設して6年。不動産店からアパートの斡旋を受けて出所者の住居を確保し、一緒に仕事を探して、これまで約40人が自立した。
 犯罪白書によると刑法犯の認知件数は昨年、約92万件と戦後最小を記録した。
しかし、初犯者が順調に減っているのに比べ、再犯者の割合は年々増加し、48・7%となり、現在と同様の統計を始めた昭和47年以降最悪の数値となった。また無職者の再犯率は有職者の約3倍と高い水準にある。
 犯罪や非行を繰り返す人の中には、安定した仕事や住居がない、高齢者である、障害や依存症がある、十分な教育を受けていない等により、社会への復帰には支援が必要なものが多く存在する現実もある。
 平成28年12月、「再犯の防止等の推進に関する法律(再犯防止推進法)」が成立。これを受けて、国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現を図るため、平成30年度から同34年度末までの5年間で政府が取り組む再犯防止に関する施策を盛り込んだ再犯防止推進計画が閣議決定された。
 政府目標は、平成33年までに2年以内再入率を16%以下にする等を確実に達成し「世界一安全な日本」の実現を目指している。
 毎年7月は、法務省主唱による「社会を明るくする運動」強化月間・再犯防止啓発月間で、今年で68回目を数える。犯罪や非行をした人を社会から排除・孤立させるのではなく、再び受け入れ就労による経済的な自立や就学の支援、社会生活への適応・立ち直りを支える「地域のチカラ」を呼びかける非行予防と再犯防止の取り組みである。
 前述の五十嵐氏は、「こんな私でも人との出会いで変わった。加害者と1人でも多く繋がって、立ち直るきっかけになりたい」と話す。
 菩薩の総願ともいわれる四弘誓願に「衆生無辺誓願度」とある。刑務所で被収容者と直に接し、改善更生につとめる日蓮宗教誨師会発行の経典には「いのち あるものは 限りなけれども 誓って 導かんことを願う」との意訳を掲載している。
「いのちに合掌」を掲げる寺院や教会・結社が、多様な人々に門戸を開き仏縁を結ぶとき、「いのち」のサポートセンターとして地域社会で存在できるのではあるまいか。
(論説委員・村井惇匡)

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