オピニオン
2018年5月1日
智慧のある欲を
「世の中は、一つ叶えば、また二つ、三つ四つ五つ、むつかしの世や」。1つの願望が叶えば2つ目が欲しくなる。2つ目が叶えば3つ4つ5つ目がと、次々に欲しくなる。ああこの世はむつかしいものであるという道歌です。
まったく人間の欲望にはきりがありません。欲が欲を呼び、限りなく大きくなる。欲で身を滅ぼす人はたくさんいます。地球の環境破壊も、人間の見さかいない欲望の結果でしょう。だから欲望を全て捨ててしまえとは言いません。欲がなければ人間は生きられないし、文明の進歩もなくなってしまいます。仏教では決して欲望を否定しておらず、智慧のある欲の使い方をする「少欲知足」と言って、ほどほどの欲で足りることを知れと説きます。しかし、どの程度が「ほどほど」なのか。それを知るのが「智慧」です。「知識」ではありません。その「智慧」は神仏の慈悲に感謝して、謙虚に手を合わす日々の信仰から生まれます。
(大阪府三島布教師会長・掛下史峰)