日蓮宗新聞
2018年3月23日号
797回目・日蓮聖人降誕会
千葉県鴨川市大本山誕生寺(石川日命貫首)で2月16日、日蓮聖人降誕会が営まれた。僧侶檀信徒ら約400人が参列し、797回目のお誕生日をお題目で祝った。日蓮聖人は貞応元年(1222)の同日にお生まれになられ、あと3年で800年の節目となる慶年を迎える。
宗務院の塩田義徹伝道局長は「今、宗門では日蓮聖人降誕の奇跡を世界へ伝えるため、一丸となって事業に取り組んでいる。その中心となる聖地・誕生寺に全国からの僧侶檀信徒が集い、異体同心で唱えるお題目は全国津々浦々を照らす立正安国への大灯明になる」と中川法政宗務総長の挨拶を代読。続く石川貫首は、降誕八百年を迎えるにあたり、ただ唱えるお題目ではなく、現代社会を省み日蓮聖人がお題目を託された思いの原点に戻ろうと呼びかけた。
参列した同寺檀信徒の1人は「3年なんてあっという間。お寺と檀信徒が協力して、たくさんの人たちを迎えたい」と意気込んだ。
2018年3月20日号
思いやりだけは忘れないで
平成23年の東日本大震災発生日にあたる3月11日、被害が大きかった岩手県沿岸部の日蓮宗寺院でも慰霊と復興への祈りを捧げる法要が営まれた。震災から7年が経った今も復興がままならないなか、記憶の風化だけが進む被災地。震災で妹を亡くしたという大槌町蓮乗寺檀徒の女性は、「前に進んでいかなければならないと思うが、まだあの日から時が止まったまま」と語り、釜石市仙寿院の芝﨑恵應住職は「小さな記憶は忘れてもいい。でも思いやりだけは忘れないでほしい」と訴えた。
2018年3月10日号
堺市本山妙國寺で堺事件150年記念式典
大阪府堺市妙國寺(岡部日聡貫首)で2月23日、慶応4年(1868)に起こった堺事件の150年記念式典(主催= 堺事件を語り継ぐ会)が行われた。堺事件は、フランス(仏)軍水兵と土佐藩士22人が犠牲となった惨事。遺族や関係者ら約200人が参列する中、岡部貫首を導師に22本の塔婆を建て追善法要が営まれた。
事件の概要は発生の2月15日、堺港沖に停泊していた仏軍艦から無許可で上陸しようとした水兵20人と堺警護の土佐藩・箕浦猪之吉と西村佐平次率いる隊士と乱闘騒ぎになり、11人の仏水兵が殺され、また仏政府の要求で同月23 日に隊士11人が勅願寺だった妙國寺で切腹した。国際問題にまで発展した惨劇の発生理由は、幕末の混乱や攘夷的な考え、そして言葉の壁だったといわれている。また幕末に外国人が関係して起こった神戸事件や生麦事件よりも断然に死者数が多い。
法要後は、講談師・旭堂南陵氏の講談「堺事件と五代友厚」、紙芝居チーム・華美芝居の「堺事件で切腹を免れた烈士のその後」で、堺事件の全貌が披露された。
今回の150年に合わせて「堺事件を語り継ぐ会」の発足を主導した岡部貫首は、「昨年に150回忌を迎えたが、誰もこの事件を見直そうという機運がなかった。事件が起きた背景から、言語の問題といういわゆる外国語教育の必要性や、国際的な肌感覚、歴史などあらゆるものを学ぶことが平和に繋がる。英語教育も中高大と我々は学ぶが、コミュニケーションが取れるようにはなってない。東京オリンピックや大阪万博が予定されるなか、今のままでは日本という国が育っていかない」と訴える。
参加した1人は、「私たちが今、平和を享受しているのは、戦争の犠牲者はもちろん、こういった歴史の狭間での犠牲者の上にもなりたっていることを実感する。この事件を次世代にも語り継いでいきたい」と述べた。
妙國寺では、第41世日妙上人代の昭和12年に藩士と仏水兵の慰霊碑を建立し、今も供養が続けられている。