オピニオン

2018年2月10日

父母への孝養 ―知恩報恩―

 『父母恩重経』という経典があります。「母あるは幸いなり。父あるも幸いなり」というお釈迦さまの教えにのっとって中国で説かれたお経といわれています。作家・吉川英治の『宮本武蔵』でも「お杉ばあさん」が荒くれた無法者にこの経を読ませて改心させるというシーンがでてきます。その内容を抜粋すると以下のようになります。

 「慈悲深き母 子を宿せば 十月の月日満ちるまで おのが身と心を子に与え おのが身の病となるもいとわず かくて子は 人となる」
 「十月の月日満ち満ちて そのときくれば 陣痛の嵐吹き荒れて わが身は砕け散るごとく わが心は 乱れ狂うごとく 死に向かうほどに」
 「嵐去り安産のときは来た わが子の産声聞けば 母 死からよみがえる思いして われもまた 子と共に 生まれてきたと思う」
 「わが子を胸にいただく母は 美しく咲き香る花 子を育ていく喜びの日々 やがて年月は過ぎ 若き母も その姿は老いていく」
 「こおりつく霜の降る夜 雪積もる冬の朝 乾き温かな寝床にわが子を休ませ 冷たい床に父母は眠る」
 「胸にいだくわが子が 母の懐に大便をする 父の衣に小便をする 父母は少しもいとわず 子の着物を洗い流し 臭くてけがれたものとは 思わない」
 「わが子に食べるものを与えれば 苦いものは父母が食べ 甘いものを子に与える」
 「わが子のためならば 父母は罪となる悪業もいとわず 地獄へ落ちることさえも覚悟する」「父母は いつでもどこでもわが子から離れずに 見守っている 遠くに出かけた子があれば その顔の見えるときまで 寝ても覚めても心は騒ぐ」
 「この世に生きているときは わが子の苦しみを背負い この世を去れば わが子の守護を願う 父と母 父と母 父と母…」

 じっくり読んでみれば、父母の立場として得心がいくところが多いかと思います。また、自身が子どもだったころを思い出し、自分の親の姿を思い出した人もいたのではないでしょうか。
 では日蓮聖人は父母への「孝」ということをどのように思われていたのでしょうか?「父母の孝養こころにたらず…」(『開目抄』)と述べられていますが…。
 日蓮聖人は父母への孝養について次の言葉を遺されています。「孝とは高なり 天高けれども孝よりも高からず」。また「孝とは厚なり 地厚けれども孝より厚からず」(『種種御振舞御書』)と。
 父母への孝とは 天が高いといっても、その天よりも高く、地が厚いといっても、その地よりももっと厚いもので、人間として最も大切にしなければならない行いのこです。それでも日蓮聖人は父母に心労をかけてばかりで「父母のこころにたたらず」とその心中を記されています。
 親子の情愛の深さはどんな時代になっても変わらぬものと信じていたのは私だけでしょうか。ところが今の世の中ではどうでしょう。
 子が親を殺したり、親が子をあやめたりする報道を目にするにつけ、病んだ現代が必要としているのはお釈迦さまや日蓮聖人の教えであると痛感します。この尊い教えを弘め、安穏な世の中を築き上げるのが私たち日蓮宗の僧侶檀信徒の務めなのです。
(論説委員・星光喩)

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