オピニオン
2017年11月10日
でんでんむしのかなしみ
愛知県半田市出身の童話作家新美南吉の残した作品の中に「でんでんむしのかなしみ」という作品があります。
ある日、でんでんむしは自分の殻の中には「悲しみ」しか詰まっていないことに気づき、もう生きてはいけないと嘆きます。そこで別のでんでんむしにその話をしますが、私の殻にも悲しみがいっぱい詰まっていますと言い、また別のでんでんむしも同じことを言います。そして、最初のでんでんむしは「悲しみは誰でも持っている。私ばかりではないのだ。私は私の悲しみをこらえていかなければならない」と嘆くのをやめました。
自分の悲しみに心が囚われその不満を他人や社会にぶつける人が増えている今、この作品は私たちに悲しみに耐えることの大切さを教えてくれています。悲しみをいつまでも嘆くのではなく、悲しみを背負いながらも歩き続ける強さを私たちに伝えてくれていると思います。
(愛知名古屋布教師会長・竹内寳祥)