オピニオン
2017年11月1日
仏の佐吉
昔、人びとから「仏の佐吉」と呼ばれ、美濃聖人と称えられた「永田佐吉」(1701~89)という人がいました。生い立ちは貧しく、早くして両親に別れ、商家に奉公しながら読み書き商いを覚え、苦労の末、綿の仲買人として自立しました。佐吉の商いはお客を信用してはかりを一切使わず、相手の言い値、言いなりで取引をしていました。さぞや大赤字…と思いきや、追いはぎにも「これじゃ足りなかろう」と家に招くほど情が深い佐吉を人びとは愛敬し、かえって繁盛しました。そして、豊かになった佐吉ですが、質素な生活は変わらずに、儲けたお金は石橋や道標の設置など地域のために使い、また、信心深い佐吉は村人が自由にお参りできるよう丈六釈迦如来胴像を村に寄進しました。人を信じ、人を愛した仏の佐吉。仏国土とはそういう人々が住まう処なのでしょう。
「仏佐吉さま 仏で暮らす 誰れも仏で世をおくれ」野口雨情
(岐阜県布教師会長・天田泰山)