論説

2017年8月20日号

日本の使命と立正安国・お題目結縁運動   戦争をしない平和な世界へ

 夏になると、日本人の心を特に引き締める日が来る。
 まず第一に6月23日の「沖縄慰霊の日」である。
 第2次世界大戦の末期、沖縄は日本本土決戦の砦となって、現地の人びとを巻き込んだ悲惨な戦闘がくり広げられた。
 沖縄戦で犠牲になった人びとは23万人余といわれている。その方がたの氏名は、最後の激戦地の摩文仁の丘に建てられた「平和の礎」に刻まれている。
 この「平和の礎」には、年々新しく判明した戦没者のお氏名が加えられている。
 この「平和の礎」を建立することに情熱を傾けた元沖縄県知事の大田昌秀氏が、今年6月12日に、92歳で亡くなった。大田元知事の偉大な功績に対し、心から敬意を捧げたい。
 大田知事は、この「平和の礎」の建立に当たって、犠牲者を1人残らず刻名したという。その狙いは次のようにある。
 「敵味方を問わず刻名することによって、改めて戦争の悲惨さは言うに及ばず、無益な殺戮の限りを尽くす人間の愚かさを想起し、2度と同じ過ちを繰り返さないとの誓いの証にするためであります」と。
 沖縄戦だけではない。第2次世界大戦では、世界中で5千万人、日本だけで3百万人の尊い命を失っている。
 72年前、戦争の残酷さを経験した日本は、非戦の誓いを立てて新日本の建設に立ち上がった。この非戦の誓い・戦争の放棄こそが、日本の使命であることを忘れてはならない。
  核兵器のない世界
 次に8月6日には広島、9日には長崎の原爆忌である。今年も広島・長崎の両平和公園は、原爆死没者を慰霊し、核兵器廃絶を願う人びとで埋め尽くされることであろう。
 特に今年は、北朝鮮の核開発が進み、ミサイル発射実験が矢継ぎ早に行われている中での原爆忌である。
 さらにトランプ米大統領の「核能力の強化・拡大」、プーチンロシア大統領の「核戦力の近代化」などの発言がなされている中で迎えた原爆忌である。
 このように、核なき世界を目指してきた世界に、暗雲をもたらせているような情勢の中で、1つの希望の光が見えてきた。それは7月9日国連本部で「核兵器禁止条約」が採択されたことだ。これは広島・長崎に原爆が投下されてから、初めて核兵器の禁止が明文化され、核廃絶実現へ向けての歴史的1歩が踏み出されたことになる。
 この条約には122ヵ国が賛同したが、核保有国を始め核の傘に依存する国ぐには参加していない。特に残念なことは、核廃絶を世界で率先して推進しなければならない日本が参加していないことだ。日本の使命を忘れた日本で、私たちはどう生きていったらよいのだろうか。
  立正安国・お題目結縁運動
 北朝鮮の核開発を止めさせるために、国連で制裁決議が行われたが、各国とも足並みが揃わない。北朝鮮を決断させる手だてがなくなってきている。
 北朝鮮に核を放棄させる道は世界の核廃絶しかない。
 世界人類平和の実現の時が来ている。日本の使命である戦争の放棄と核兵器廃絶を地球人類に強く訴えていくことだ。
 私たち日本人が、日本の使命を自覚して動き出す時が来ている。そのために、私たちは絶対平和の法華経の理念を掲げて、「立正安国・お題目結縁運動」に邁進していこう。
 相続く世界的天災地変は、人類よ天の声に耳を傾けよと訴えているように思えてならない。
(論説委員・功刀貞如)

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2017年8月10日号

法界万霊の供養とともに平和祈願も  ー お盆と終戦記念日を迎えてー

間もなく旧のお盆と8月15日終戦記念日を迎える。
 お盆には、我々は先祖の霊、祖父母、父母、兄弟の霊を精霊棚に迎え、家族皆で故人の回想をし、僧侶を迎えて供養し、菩提を弔う。
 夕方になると迎え火を焚き、灯籠に灯を点す。ロウソクの火は風に揺れる。そんな折には、根源的感覚が働き、先祖の霊の存在を感じるのである。
盆中に施餓鬼を行う寺も多い。
 檀家各家先祖の諸霊魂供養の他、檀信徒各家親戚縁者ばかりでなく、法界万霊の菩提を祈る行事である。
 施餓鬼壇の上を見ると、一番中心に「法界万霊」、横に「戦死病没之霊位」「当山檀方中一切之諸精霊」「当山歴代之諸上人覚位」等の位牌が並んでいる。「法界万霊」とは、この世に命を授かった生き物全て、即ち人間、動物、植物等生命あるあらゆる存在を供養する位牌である。
「戦死病没之霊位」とは、戦死病没した日本の人たちはもちろん、過去から第2次世界大戦、その後中東、アフリカ、東南アジア等の戦争で亡くなった人々全ての霊を供養する位牌である。
 日蓮聖人が『盂蘭盆御書』で示しておられるように、自分の縁者ばかりでなく、近隣の人々に供養することが、先祖供養になるのである。更に、この世に存在した人の霊魂だけでなく、この世に存在した動物植物全ての存在の菩提をとむらうのである。
 日本ではお盆と、第2次世界大戦終戦に至る広島・長崎原爆投下、ポツダム宣言受諾の時期が重なる。
 8月に入ると、旧盆の棚経が始まる。精霊棚がしつらえられ、先祖が戻ってくる準備が進む。盆提灯が下げられ、火が点されると、不思議と先祖がこの家に戻ってきているような感じがする。
 やがて8月15日がやってくる。この日には、国主催の戦没者慰霊祭が行われる。天皇、皇后両陛下、内閣総理大臣をはじめ多くの人々、遺族等が集まり、軍人・軍属・民間人の戦死病没した方々の慰霊をする。
 今次大戦では広島・長崎の原爆投下、沖縄戦への米軍上陸、東京大空襲、地方都市の無差別爆撃等で、多くの民間人が直接の被害者となった。 
 軍人といっても、職業軍人よりは招集軍人が多かった。民間人が招集され、にわか仕立ての軍人として参戦し、多く戦死していった。
 戦争末期には子どもが3人も4人もいる父親が招集され、満州や南太平洋で参戦、戦死して遺骨も帰ってこなかった。子ども・老人も爆弾・焼夷弾の攻撃に晒され、家族は食物が無く飢えた。
第2次大戦は、航空機の性能が向上、原子爆弾を始め、想像を絶する大量破壊兵器を運ぶことが可能になり、多数の人命を奪った。
この大戦では犠牲になった人の数が、概数ながら算定されている。統計の取り方が均一でないので、概数で見てみる。これは軍人・民間人を合計した死者数である。
世界では6000万~8500万人、当時の世界人口の約2・5%が犠牲になったといわれている。
各国の犠牲者をみると、日本は260万~312万人、日本とともに枢軸国であったドイツは700万~900万人で日本の約3倍もの人が犠牲となった。
中国では、共産軍と国民軍の内戦、食糧不足による餓死を含めて、700万~900万人が亡くなったと言われている。
最も多くの犠牲者が出たのは、ソビエト連邦で、2180万~2800万人が犠牲になったといわれている。 ここにあげたのは、ほんの数ヵ国である。他にもヨーロッパ、アジアの国々は多くの犠牲者を出した。
このような大量殺人という地獄の業を人類が犯したのである。その中心にいた日本、ドイツの責任は重い。日本は第2次世界大戦の原因、誤りを国家として総括したのであろうか。
 お盆には、自家の祖先を供養するだけではなく、生きとし生けるもの全て、もちろん戦病死した世界の人々の霊も、供養し、平和を祈りたい。
(論説委員・丸茂湛祥)

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2017年8月1日号

核兵器禁止条約と被爆国日本

 今春、国連本部での「核兵器禁止条約」の交渉会議で、日本政府の代表は「核兵器保有国の理解や関与が得られない」と、交渉への不参加を宣言し、これまでの「核保有国と非核保有国の橋渡し役」という立場を放棄した。被爆地広島出身でもある岸田文雄外相は、昨年10月には「積極的に参加し、主張していきたい」と訴えていたにも関わらず、一転して「核兵器国と非核兵器国の対立をいっそう深めるという意味で逆効果にもなりかねない」と交渉への不参加を表明した。その後、7月の「核兵器禁止条約」の交渉会議では、120ヵ国以上が参加し、ついに採択へと至った。しかしそこには核兵器を保有する米国、英国、ロシア、フランス、中国、そして米国の「核の傘」に入る日本などの姿はなかった。
 日本政府としては「現実の安全保障問題の解決に結びつくとは思えない」と表明し、5核保有国などと歩調を合わせる道が妥当と判断したのである。
 しかしこのような日本の姿勢に対して、被爆者や多くの国民から落胆や憤りの声が出ている。
これまで日本政府や多くの政治家は「世界で唯一の戦争被爆国として…」ということばを繰り返し述べ「核兵器廃絶に向けて世界をリードしていく」という決意を示していたはずである。ところがこれでは「被爆国としての責任放棄」という声が上がってもやむを得ない。
 核兵器は世界の平和のための「必要悪」などではなく、人類にとっての「絶対悪」であり、またそれは道徳に反するものであり、法律にも反するものであるという被爆者のことばは重い。
核兵器の非人道性は言うまでもないが、それが一旦使用されれば、地球規模で重大な環境破壊を引き起こし、人類の生存を脅かし、将来世代の命までを危険にさらすことをあらためて自覚しなければならない。
 今回、条約の前文に「核兵器使用の犠牲者の苦難を心に留める」として、「Hibakusha(ヒバクシャ)」のことばが入ったことはせめてもの救いであった。
 これについて広島市の松井一実市長は「被爆者を『サバイバー(生存者)』とせず、『ヒバクシャ』と記述した点は、被爆者として生き延びた人という英訳以上の、書ききれない意味をこの一語に込めてもらった」と述べている。
 しかし、今後核保有国がこの条約に加盟する見込みは立っていない。核兵器廃絶ということは、今日の世界情勢から考えれば一朝一夕で成し遂げられるものではないことは容易に想像でき、日本政府の立場も一面的には理解もできる。しかし、この道が「橋渡し役」を担う「唯一の被爆国」としての最善の選択であったのか大いに疑問が残る。今後の日本政府の方向性をしっかりと見守りたい。
 日蓮宗では、これまでも原水爆・核兵器廃絶を訴え続けてきた。また今年三月の日蓮宗定期宗会において小林順光宗務総長は「戦争を知らない世代には、その悲惨さを伝え続け、核兵器廃絶を目指し、いかなる戦争にも反対し、世界立正平和活動を続けていく」と述べている。
 昭和34年、千鳥ヶ淵戦没者墓苑(東京都)が建立されて以来、日蓮宗では毎年八月十五日に戦没者追善供養と世界立正平和祈願法要を営んでいるが、筆者も毎年参列し、その度に不戦の誓いを我が身に刻んでいる。
「世界唯一の被爆国」ということばは、単なる枕ことばであってはならない。その背後から聞こえる「ヒバクシャ」の悲痛な叫びをしっかりと受け止め、核なき世界の実現へと歩みを進めていかねばならない。
(論説委員・渡部公容)

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