オピニオン

2017年8月10日

法界万霊の供養とともに平和祈願も  ー お盆と終戦記念日を迎えてー

間もなく旧のお盆と8月15日終戦記念日を迎える。
 お盆には、我々は先祖の霊、祖父母、父母、兄弟の霊を精霊棚に迎え、家族皆で故人の回想をし、僧侶を迎えて供養し、菩提を弔う。
 夕方になると迎え火を焚き、灯籠に灯を点す。ロウソクの火は風に揺れる。そんな折には、根源的感覚が働き、先祖の霊の存在を感じるのである。
盆中に施餓鬼を行う寺も多い。
 檀家各家先祖の諸霊魂供養の他、檀信徒各家親戚縁者ばかりでなく、法界万霊の菩提を祈る行事である。
 施餓鬼壇の上を見ると、一番中心に「法界万霊」、横に「戦死病没之霊位」「当山檀方中一切之諸精霊」「当山歴代之諸上人覚位」等の位牌が並んでいる。「法界万霊」とは、この世に命を授かった生き物全て、即ち人間、動物、植物等生命あるあらゆる存在を供養する位牌である。
「戦死病没之霊位」とは、戦死病没した日本の人たちはもちろん、過去から第2次世界大戦、その後中東、アフリカ、東南アジア等の戦争で亡くなった人々全ての霊を供養する位牌である。
 日蓮聖人が『盂蘭盆御書』で示しておられるように、自分の縁者ばかりでなく、近隣の人々に供養することが、先祖供養になるのである。更に、この世に存在した人の霊魂だけでなく、この世に存在した動物植物全ての存在の菩提をとむらうのである。
 日本ではお盆と、第2次世界大戦終戦に至る広島・長崎原爆投下、ポツダム宣言受諾の時期が重なる。
 8月に入ると、旧盆の棚経が始まる。精霊棚がしつらえられ、先祖が戻ってくる準備が進む。盆提灯が下げられ、火が点されると、不思議と先祖がこの家に戻ってきているような感じがする。
 やがて8月15日がやってくる。この日には、国主催の戦没者慰霊祭が行われる。天皇、皇后両陛下、内閣総理大臣をはじめ多くの人々、遺族等が集まり、軍人・軍属・民間人の戦死病没した方々の慰霊をする。
 今次大戦では広島・長崎の原爆投下、沖縄戦への米軍上陸、東京大空襲、地方都市の無差別爆撃等で、多くの民間人が直接の被害者となった。 
 軍人といっても、職業軍人よりは招集軍人が多かった。民間人が招集され、にわか仕立ての軍人として参戦し、多く戦死していった。
 戦争末期には子どもが3人も4人もいる父親が招集され、満州や南太平洋で参戦、戦死して遺骨も帰ってこなかった。子ども・老人も爆弾・焼夷弾の攻撃に晒され、家族は食物が無く飢えた。
第2次大戦は、航空機の性能が向上、原子爆弾を始め、想像を絶する大量破壊兵器を運ぶことが可能になり、多数の人命を奪った。
この大戦では犠牲になった人の数が、概数ながら算定されている。統計の取り方が均一でないので、概数で見てみる。これは軍人・民間人を合計した死者数である。
世界では6000万~8500万人、当時の世界人口の約2・5%が犠牲になったといわれている。
各国の犠牲者をみると、日本は260万~312万人、日本とともに枢軸国であったドイツは700万~900万人で日本の約3倍もの人が犠牲となった。
中国では、共産軍と国民軍の内戦、食糧不足による餓死を含めて、700万~900万人が亡くなったと言われている。
最も多くの犠牲者が出たのは、ソビエト連邦で、2180万~2800万人が犠牲になったといわれている。 ここにあげたのは、ほんの数ヵ国である。他にもヨーロッパ、アジアの国々は多くの犠牲者を出した。
このような大量殺人という地獄の業を人類が犯したのである。その中心にいた日本、ドイツの責任は重い。日本は第2次世界大戦の原因、誤りを国家として総括したのであろうか。
 お盆には、自家の祖先を供養するだけではなく、生きとし生けるもの全て、もちろん戦病死した世界の人々の霊も、供養し、平和を祈りたい。
(論説委員・丸茂湛祥)

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