オピニオン

2017年7月1日

宗門運動で、「伝える日蓮宗」へ

 日蓮宗では平成19年~34年まで「社会の平和と幸福な生活を実現するにはお題目しかない」とし、宗門運動「「立正安国・お題目結縁運動」を展開している。目標として「現代社会の諸問題への対応」「お題目こそ成仏の種」「心の平和・社会の平和・世界の平和」「世界の仏教徒と共に」「人こそが法の担い手」等が提案され、最終的に「敬いの心で安穏な社会づくり、人づくり」と決められた。
 「敬いの心」とは、宗門運動をお題目信仰に根差した信仰運動に昇華させる宗教的信条で、法華経常不軽菩薩品第21に説かれる常不軽菩薩の「但行礼拝」の精神に根源がある。但行礼拝とは常不軽菩薩があらゆる人々に「わたしは深く汝等を敬います、皆さんは仏様になるのですから」と語り、合掌礼拝した行為を指す。謗られ石を投げられても合掌礼拝を続けた常不軽菩薩。日蓮聖人はこの但行礼拝こそ末法におけるお題目結縁の軌範と受け止めた。「安穏な社会づくり」とは、お題目信仰による安穏な社会の実現のこと。「人づくり」とはお題目を広める人材育成を指す。「敬いの心=但行礼拝の精神」「安穏な社会づくり=立正安国の樹立」「人づくり=お題目を弘める人材育成」と理解できる。
 元来、宗門運動とは各寺院・教会・結社の宗教活動を支援し布教現場を活性化させ、宗門の一員として同一方向にお題目布教することを目的としている。そのため「宗門あっての各寺院・各寺院あっての宗門」という連帯感が求められる。
 日蓮宗の布教は「年度布教方針」に準拠し、宗門運動を推進する形で行われてきた。宗門運動を推進し活性化するための方策として「三大聖年慶讃事業」が組み込まれる。三大聖年とは日蓮聖人の降誕・立教開宗・遠忌を50年ごとに慶ぶ行事で、今回は平成33年の「宗祖降誕800年慶讃事業」だ。
 前回の立教開宗750年事業が施設建設というハード面重視だったのに比べ、降誕800事業は①宗門の社会的認知度を高める事業②布教現場活性化のための資料提供、③僧侶檀信徒の次世代育成などソフト面を重視している。現在「夢さがし作文大賞」や「災害支援いのちの井戸」登録、「スーパー歌舞伎日蓮」上演など準備され、今後は唱題行全国展開、寺フェス、祖山霊跡史跡寺院の顕彰、青少幼年教化800寺構想など諸事業が進行されようとしている。
 ところで一般社団法人「寺の未来社」が昨年末に行った「寺院・僧侶に関する生活者の意識調査」は興味深い結果だった。無為作に選んだ全国成人男女1万人対象のアンケート調査で「僧侶・寺院への期待度は」の問いに①全く期待してない13%②あまり期待していない21%③どちらでもない41%④比較的期待している18%⑤大いに期待している5%だった。「僧侶にどのような話を聞いて欲しいか」の問いに(複数選択可)①生き方60%②世間話、雑談40%③人間関係30%④仕事20%⑤仏事全般20%だった。
 僧侶・寺院への社会からの期待度はかなり低く、仏事全般より人生観や雑談など仏教以外の法話内容が求められているという結果だった。「社会性のない宗教は信頼できない」と指摘されるように、複雑化する現代社会にあって、一般社会の目線に立って社会の苦悩を宗教とりわけ日蓮宗がどのように受け止め、教化するのかが問われている。ストレスから自分の限界を感じた人達が宗教セミナーなどで個人的修行を行っているという。そのような人たちに宗門レベルで何ができるのか、いかに間口を広げた対応ができるのか、社会情勢、社会変化に対応した宗門の組織化が求められている。「伝える日蓮宗・受け止めてくれる日蓮宗」を今回の宗門運動でいかに社会に見せられるか期待したい。
(論説委員・奥田正叡)

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