2017年6月24日
神奈川2・横須賀市大明寺で社教研修会開催
【神奈川二】社教会(山本貫恭会長)主催、宗務所(楠山泰道所長)後援の「平成29年度社教研修会」が6月24日、横須賀市大明寺(所長自坊)で行われ、僧侶・寺庭婦人・檀信徒ら、約100人が出席した。
同社教会は「私にできる社教活動」「お寺でできる社教活動」をテーマとして活動しており、その活動の一環として年に一度講師を招いて研修会を行っている。
今年は、池田和嘉子氏(東京都玉川寺寺庭婦人・立正福祉会本部子どもの心理相談室相談員・身延山保育園家庭支援相談員)が、『育ちに寄りそう子育て~かかわりの中での育ち~』と題して講演を行った。
講演に先立ち、楠山所長、山本会長が挨拶。
講演では、池田氏ははじめにこころの発達について話し始め、
①人間関係の基礎②人間関係を支えるもの③人間関係の形成と発展に必要なもの、について説明。
①「人間関係の基礎」では「初期の養育者との愛着関係(母子間のやりとり)が基本的信頼関係を形成する。それはその後の家族関係や人間関係の原型であり、生涯を通じて一番大事な関わりの基礎となる」と話し、
②「人間関係を支えるもの」として「共感性(他者と喜怒哀楽の感情を共有すること)」「役割取得能力(自己と他者の視点の違いを認識し、他者の見方や感情を推論する能力)」「社会的情報処理(他者からの反応に注意を向け、その意味を理解し、自分が相手にどのような反応を返せるかを考え、その結果に基づいて相手に反応を返す)」があると説明、
③「人間関係の形成と発展に必要なもの」については、「仲間とのやりとり(相互作用)」「仲間とのぶつかり合い」「寛容性をはぐくむ」ことが必要である、と説いた。
まとめとして「子ども期の人間関係の発達にとって重要なものは、愛情豊かで思慮深い大人による保護・世話による大人と子どもの相互の関わりである」「安定した内的ワーキングモデルを心の中に作ることができると、子ども同士の相互の働きかけ・関わりが深まり人への信頼感・自己の主体性が形成される」と話した。
続いて池田氏は「育ちに寄りそう子育てとはどういうことか、一緒に支援のあり方を考えてみよう」と話し、「人間関係のつまずきや不適応行動の背景にある要因」を説明。そこには①虐待の世代間連鎖によるもの②(神経)発達障害に起因する二次障害③精神疾患に起因するもの④人間関係において発動する心性である「甘え」の欲求処理の違いがあるとし、そのそれぞれの要因の仕組みと、親への関わり方、子どもへの対応など、支援の仕方について詳しく説明した。
そして、「育ちに寄りそう姿勢」とは①つまずきや不適応行動の背景要因とその心性を理解すること②「主人公は支援を求めている人」であり、行動の変化・環境の整備には時間がかかること・繰り返しが必要なこと③個人に内在する自ら立ち直ろうとする力を信じ、その育ち(心の安全基地)を再構築すること④実際の支援にあたっては、活用できる人的・物的資源を十分に生かすこと⑤支援者が一人で抱え込まないで、専門家・関係者間の連携を強化すること、であると話し、最後に「子どもたちの心性を理解したうえで、明日から優しい言葉をかけてあげて、甘えさせてあげてください。何歳になっても人は甘えたいのです。その甘えを十分に認めてあげて、より良い子どもの育ちが支えられることを願っています」と会場に投げかけ、講演は終了した。
質疑応答では、発達障害の子どもや、その保護者への対応について、活発な質問が池田氏に投げかけられた。最後に山本会長が挨拶し、研修会を終了した。
講演を聴いた40代の女性は「私にも小学生の子どもがいる。周りには発達障害の子どももいるので、これを機にもっと対応を学びたい」、同70代の女性は「今後は嫁や孫にもっと寄りそいたい」と話すなど、子育てへの関心を深めた様子だった。