2017年6月20日
外出する前というのは慌ただしいものだが、
外出する前というのは慌ただしいものだが、その日は特に忙しかった。出掛けに電話がかかってきたり、車のカギが見当たらなかったりと、気忙しい中での外出だった▼大事な用件で人に会わなくてはならない。遅れてはいけない、そんな思いで車に飛び乗り一気にエンジンをふかして走り出した。途中で靴が気になった。日頃履き慣れていない靴のせいか、左右の足に何となく違和感があった。しかしさほど気になるものでもなかったので、そのうち靴のことなど忘れて、大事な用件を済ませて家に帰ってきた▼何とかうまく片付いたという安堵感に浸りながら、さて、靴を靴箱にしまう段になって気がついた。右と左、全く別の靴だったのだ。どちらも黒いがデザインは違う。急いでいたため間違えたのである。そう言えば、お辞儀を交わしたときの相手の様子が変だった。いやに長く頭を下げていた。思い当たって顔を赤くした▼過ち、錯覚というものは誰にもある。ただ、世の中には当人が顔を赤らめるだけでは済まない過ちもある。気が急いていたとはいえ、靴を取り違えるほど頭に血が上った状態でハンドルを握り、よくも事故を起こさなかったことだと冷や汗が出る▼正しくものを見るというのは仏教の基本である。国であれ会社であれ個人の人生であれ、ハンドルを握るものは冷静に、ものの道理をしっかり見て進むべきである。(直)