オピニオン

2017年5月10日

軍事開発と科学研究

科学者たちによって形成されている日本学術会議では、「軍事研究を行わないとの過去の声明を継承する」と発表した。
科学の進歩は、人類の生存をより良くするためにあらねばならない。過去から現在に至るまで多くの場合、科学技術がもたらした力は、私たちの生活を向上させ便利にし、私たちはその恩恵を享受してきたことは事実である。
しかし、こと武器などの軍事に関することは、進歩すればするほど大量殺戮・大量破壊につながり、私たちの不安を増大させてきた。今世紀はもちろん、第2次世界大戦以降から武器の発達は急速に進歩し、このままでは人類の生存にも影響を及ばさないとは限らないのではと危惧もされている。
太平洋戦争では、多くの科学者が戦争に加担させられた。武器の作製のため強制されて従事したのである。
戦後その反省から、日本学術会議において、ノーベル物理学賞受賞者の湯川秀樹博士、朝永振一郎博士、益川敏英博士を中心とする科学者たちは、科学技術を戦争のために利用することは科学者の良心に反することであり、今後軍事には一切協力しないことを申し合わせ、これを守ることに決めたのである。
近年になって、防衛省はより高度な武器を開発するために新しい助成金制度を導入した。そして、有望な技術を研究している国立大学をはじめ各大学や研究機関に対して応募を呼びかけたのである。
防衛省が新たに設けたこの助成金制度は、「安全保障技術研究推進制度」という。中身は防衛装備品開発などであり、今日では最新鋭の戦車やヘリコプターには、高度な技術が整備されてきている。応募のあった大学から有望な研究を選び、採用した研究者に助成金を付与するというものであるが、その助成金は、軍事研究費として一昨年度は3億円、昨年度は6億円になり、なんと今年度は110億円と大幅に増額されている。そして、この研究費制度への応募を禁じる大学もある中、制度は着々と拡充しているというのである。
科学者の中からも、表面的には純粋な科学研究とあるが、結果として武器に応用されてしまうのではないかという疑念が残るとの意見が出ている。名古屋大学の池内了教授も「科学が軍事に加担していっていいのか、危険な道へ踏み出したことが気になる」と心配する。
研究した科学技術が、人の命を奪う武器になる恐れが十分考えられよう。
このたびの日本学術会議において、「軍事研究は、学問の自由と緊張関係にある。科学技術が軍事に使われたことを反省し」「軍事には加担しないとの初期の決定を承継する」との声明が出されたが、科学者たちの良心を見た思いがする。
戦後70年を経過した今日、広島・長崎の悲惨な状況は、科学の研究成果が悪魔に魅せられた結果であり、多くの人びとの命を奪い、今なお後遺症で苦しんでいる人びともいる事実を決して忘れてはならない。
(論説委員・石川浩徳)

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