オピニオン
2017年5月1日
温もりのある葬儀
昨今の葬儀事情…近所の人にも友人にも知らせない、いわゆる家族葬が増えてきたようだ。火葬場に直行する直葬という言葉さえ耳にする。何とも嘆かわしい限り。遺された者が故人の冥福を祈り、生前中の交誼に対して感謝を申し上げ、心にけじめをつけるのが葬儀ではなかったか。
先日、高校の同級生M君の母親が入院先の病院で亡くなった。彼女は10年ほど前まで、先に旅立ったご主人と居酒屋を営んでいた。10人も入れば満席になる小さなお店。我々が若い頃は、週末の憩いの場であった。彼女は入院中、「家に帰りたい」と何度も訴えたという。M君はお通夜までの3日間、自宅で寝かせ供養した。そして葬儀当日、親類や友人、我々同級生仲間を含むかつての常連客が集まった。回向が終わり、棺に花を手向けながら、「美味しいものを有り難う」「本当にお世話になりました」などと口々に話しかけ、最後のお別れをした。温もりのある葬儀だった。
(神奈川2部布教師会長・瀧川真弘)