2017年4月10日
「北海道新幹線、開通一周年」
「北海道新幹線、開通一周年」の声がテレビから聞こえてきた。すぐに記憶の窓から顔を出したのが「新車の香り」だ。昨年の3月26日に開通して10日後に乗車する機会をえた。車両に乗り込むと直ぐに鼻を突いてきたのが「新車の香り」だった。新幹線も自動車と同じように新車の香りがするのに驚く。好きな匂いなので、車両の新しさと重なり、気分よく新函館まで旅行が出来た▼自動車の新車の香りは、内装材のプラスチックや接着剤に含まれている有機溶剤の臭いで、シンナーの臭いといってもいいものだ。健康にはあまりいいとはいえない。それが人によっては「いい匂い」と認識され、記憶に起こる▼香りと記憶の関係は「プルースト効果」と呼ばれ、本能的な行動や感情に、香りは直接作用し記憶が蘇ることが起こる。これは五感の中で臭覚だけが持つ特徴だという▼歌舞伎役者の坂東玉三郎さんが、ある雑誌の記者に「舞台ではどんなことに気を付けていますか」と聞かれて、「舞台から立ち去ったあと、何か漂うようなものが残るように心掛けています」と答えていた。その人の残心、残り香といってもいいだろう▼初めて身延山に参拝した、山の清々しい空気と祖師堂のツンとした匂いが忘れられない。自分だけの身延山のニオイだ。初めてお題目を唱えたのはいつだったろうか。心の新車の香りはまだしているだろうか。 (汲)