ひとくち説法
2017年2月20日号
自分を通してみるいのち
江戸時代、ある修行僧が教えを受けようと高僧を訪ねた。折悪しく高僧は風邪をひいていた。「いま隣から薬をもらって来るので、飲んだ後にでも話をしよう」と、外に出ていった。修行僧は、「風邪をひいたくらいで隣まで薬をもらいに行くとは、いのち根性の汚いことだこと」と、帰ってしまった。戻ってきた高僧は「やれやれ、残念じゃのう」と、紙に何かを書いて小僧に持たせ後を追わせた。追いついた小僧は手紙を渡すとそれには、
〽浜までは海女も蓑着る時雨かな(俳人滝瓢水)とあった。今すぐにこの身は海中に潜ってしまうが、それまでは我が身を愛おしむもの。己れの命を大事にせぬものが、どうして他人さまの命を救う仏の教えを理解することができようか、との教えをこの句に込めたのです。
お祖師さまが龍ノ口の首の座から極寒の佐渡にあって、私たちを救わんと、消えかかるご自身のいのちを見つめられていたことが偲ばれます。
2017年2月10日号
菩薩行の実践
子どもの貧困率の上昇が止まらない。内閣府の統計では18歳以下の子どもの貧困率は17%にもなるという。対策は行政の責任であるが、その歩みが遅いのが何とも、もどかしい。
そこで子ども食堂の登場である。札幌で開始準備に忙しいHさんに会った。ボランティア活動であるが故に、場所・人材・費用などの確保の問題が多いことも聞いた。私も何か協力できないかと考えたが、札幌まで80㌔も離れた所に住んでいることもあり、気軽に参加できないのが悲しい。それでも自坊に上がるお供物を提供して、子どもたちに役立ててもらうことを快諾していただいた。
法華経の熱心な信仰者であった宮沢賢治の一文が頭をよぎる。「世界全体が幸福にならないかぎりは、個人の幸福はあり得ない」。
Hさんの尊い志と重なり合う。浄仏国土建立を願わずにはいられない切ないひと時だった。その実現には、私たちの菩薩行の実践以外にない。
北海道西部布教師会長・水谷寛斎
2017年2月1日号
足ることを知って
世界幸福度ランキングで私たちの住む日本は54位だそうです。また幸福を感じている人の割合は全体の43%で先進国の中では最低レベルの割合だそうです。あるバングラデシュからの留学生は「私の国の人びとがこのような暮らしができたら、幸せすぎて気絶するかもしれない」と言ったそうです。
私たちはこの平和で恵まれた現状にも満足せず、これ以上より以上と限りのない欲のために不満が絶えず、愚痴や文句ばかりを言い、いつまでたっても幸せを感じることがいるのではないでしょうか。お釈迦さまは「小欲知足」「欲を少なくして足るを知る」という教えを残されました。
「足ることを知る」。私はこれが幸せへの近道だと思っています。愚痴や文句ばかりを言っていても誰も幸せになりません。お題目を唱え、仏の教えを学び、感謝と敬いの心を持ち、多くの幸せを感じる心を養いましょう。
(北海道東部布教師会長・久富慈順)