日蓮宗新聞
2017年1月20日号
日蓮聖人への年賀のご挨拶 御年頭会
日蓮聖人の新年最初の月命日にあたる1月13日、山梨県総本山身延山久遠寺(内野日総法主)で御年頭会が営まれた。僧侶檀信徒約500人が参列し、日蓮聖人の御魂にお年賀を申し上げるとともに、立正安国への誓いを新たにした。
法要では内野法主猊下が御膳と酒、香を捧げられ合掌しながら静かに頭を垂れられた。また南無妙法蓮華経と唱え始められると参列者が続き、焼香の煙が祖師堂に舞うなかお題目が響き渡った。日蓮聖人が馬を愛されたという故事から行われる曳馬式では、内野法主猊下が馬に人参を与えられ愛でられた後、世界平和や参拝者の安寧などを願われ改めて祈りを捧げられた。
祝賀会では、内野法主猊下が日蓮聖人の高弟、六老僧ゆかりの寺院からなる六老門跡の各貫首らとともに御盃の儀を執り行われた。また新年のご挨拶で、「一念信解」の教えを示され、久遠の本仏を始め自分自身や人を「信じる」ことの大切さを説かれた。さらに内野法主猊下は、「人が互いに信じ合えるようになれば、日蓮聖人降誕八百年の真の報恩となる」と教示され、「本年が法華経の感激に満ちあふれた1年となるようお祈り申し上げます」とお言葉を閉じられた。
小林順光宗務総長は挨拶に立ち、身延山からお題目を響かせ子や孫、社会へ広め、安穏な世界の実現のためにともに僧侶檀信徒異体同心で歩むことの必要性を述べた。身延山参与・信徒総代の堀内光一郎氏(富士急行社長)は、「安穏ではない世の中にあってお題目は私たちを必ず明るい未来へと導く道標であり、人生の指標。お題目を日々の光明として、修行精進を誓い申し上げます」と挨拶した。
御年頭会は、身延山開基檀越の波木井実長公が日蓮聖人の草庵を訪れ、新年の挨拶をしたことにはじまる。また実長公の館で波木井家の先祖回向をされた後、歓待を受けられた日蓮聖人はことのほかお喜びになられたという。日蓮聖人ご在山の9ヵ年、さらにご入滅後も御魂に賀を献じ忍難慈勝高徳を偲ぶために現在まで続いている。
2017年1月10日号
ハワイで唯一回向してきた日蓮宗別院
真珠湾攻撃から75年が経った12月8日、在米国ホノルル領事館と米海軍が共催する初の日米合同追悼式典が、真珠湾フォード島で行われた。式典の実現に寄与したのは、ハワイの仏教寺院で唯一日本軍の戦没者英霊簿を奉安し回向してきたハワイ日蓮宗別院の平井智親主任。この日、平井師は英霊簿を胸に抱きながら、記載された65人とアメリカ側犠牲者約2400人に哀悼の誠を捧げた。
式典には米国海軍、日本の海上自衛隊と宗教者ら約80人が参列。在ホノルル三澤康総領事は、「75年の節目に両国の犠牲者を追悼する式典が真珠湾で初めて開催されたことに大きな意義がある」と述べた。ジョン・フュラー米国海軍ハワイ司令官は不戦の誓いを述べ、両者とも日米の友好関係が何よりも大切であることを強調した。 この日は会場に星条旗と日の丸を掲揚して日米両国の国家を吹奏し、両国の犠牲者を弔う献花が2つ並んだ。
この式典は一部で反発が予想されることから限られた出席者で行われた。日蓮宗ハワイ別院(平井智親主任)では1人でも多くの人に日米双方の犠牲者の慰霊をしてもらおうと、真珠湾での式典に続き、日蓮宗ハワイ別院で慰霊と世界平和祈願法要を開催した。三澤総領事や海上自衛隊関係者、在ハワイ各仏教宗派僧侶など約100人が出席し、お題目が響くなか出席者は焼香し手を合わせた。平井師は「今日の日米の繁栄と強い友好関係を鑑みる時、真珠湾攻撃は不幸な出来事であったものの、その犠牲が今日の平和の礎となり、同じ戦争で散った日米両国の犠牲者は対等に同時に弔うべき戦争の犠牲者である」と語り、世界平和を心から祈った。
身延山でトレイルラン開催
山梨県身延山を駆けるトレイルランニング・修行走が11月27日に開催された。23日から24日にかけて関東甲信での降雪により、急遽大会内容が変更となったが、当日は男女504人が参加し、信仰のお山の魅力に触れた。
トレイルランニングは、体力だけではなく未舗装の山野を走るため、バランスを取る技術などが要求される競技。身延山での同競技は4年前に始まり、600人の出場枠が3時間で埋まるほど人気だ。今回は門前町を出発し、七面山敬慎院を通過し戻る「七面昇龍ロングコース」と奥之院思親閣を通過し戻る「思親報恩ショートコース」が設定されたが、降雪の影響で思親閣まで一気に駆け上がる内容に変更となった。
この修行走を企画した身延町武井坊の小松祐嗣師は、「今大会に先立ち、走るのではなく歩いて1泊2日で七面山を参拝する企画を行った。参加者のなかには、以前の大会に参加して〝もっとゆっくりお山に触れて見たい〟という人もいて、ご来光に自然と合掌する姿が印象的だった」と語る。大会がきっかけで改めて参拝に来る人や、参加者が身延山の魅力を周囲の人に伝えてくれているという。
当日には身延山門前町の女将からなる恵風会(望月敦古会長)約30人が800人分の豚汁でおもてなしするなど、町一体となって開かれているほか、前夜祭でも地域の特産品販売が行われるなど盛り上がった。
初参加の1人は、「スタート地点の大きな三門を見て思わず声が出てから、ずっとこの日蓮宗が大事にしてきた山を感じながら走った。コースはまさしく〝修行〟だったが、ありがたい気持ちでいっぱいでした」と笑顔を見せた。小松師は「本来の目的は仏教、法華経、お題目を知ってもらうこと。今後は前日に身延山内の参拝を企画するなど、もっとイベントを開きたい。その先に私たち僧侶の役割がある」と語った。