オピニオン

2017年1月1日

ひとつ心をほどくと

新しい年を迎えるには、前の年を越さねばならない。振り返ると、昨年昭和の時代を駆け抜けた多くの人が、この世を旅立った。特に作家で作詞家である永六輔さんの訃報は、彼の活躍を振り返るだけでなく、戦後復興に向けて日本が歩んだ軌跡を思い起こす機会になったと思う。永さんは、昭和8年(1933)東京のお寺の次男として生まれた。歌手坂本九さんが歌って世界的な大ヒットとなった「スキヤキソング」=「上を向いて歩こう」などさまzまな歌を作詞し、高度成長期の躍動する社会に送った。そして今、その時代を生きてきた人たちが、祖父母となり当幼稚園の在園児である孫たちの成長を楽しみに、ここに集ってくれるのだ。
驚くことに、どんな達筆な字や明確な文面よりも、孫のつたない文章、小枝のような字で書かれた「ようちえんにきてね」という招待状が、祖父母の心に火をつけ、代えがたい力を発揮し、みんなが飛行機や新幹線に乗って、全国からやってきてくれる。恐るべし孫力なのである。本年度も在園児数に対して、規制しないと会場に入れないほどの参加者が一同に会する敬老会の行事となった。孫を膝に抱き、嬉しそうにしている姿。世代を超えた繋がりが深まり広がっていくことを期待して、園長の私が選曲したのは、永さんが作詞した「見上げてごらん夜の星を」である。彼は、一貫して戦争反対を訴え続けた人である。祖父母、孫、教師たちみんなで歌うことにした。「見上げてごらん夜の星を 小さな星の小さな光がささやかな幸せを祈ってる 見上げてごらん夜の星を ぼくらのような名もない星がささやかな幸せを歌ってる」歌を通して、会場にいるみんなの心が一体になる感覚を味わいながら、ピアノの演奏とともに時間がゆっくりと流れていく。ぎゅっと孫を抱く手に力が入り、涙する人たちの姿。大合唱のホールは、感動に包まれた。私は、これと全く同じ感動を「南無妙法蓮華経」という唱題の中で感じたことを伝えたい。
唱題行は、湯川日淳上人によって研究開発され普及し、現在求道同願会がその意思を引き継ぎ私たちに唱題行として「南無妙法蓮華経」の題目受持を伝えている。この修行は、黙想する浄心行によって丁寧に身体と息、心を調える。やがて、正唱行に入り導師の木鉦に合わせ題目をゆっくりと唱えていく。導かれるように速度が上がっていく中で、皆の唱題の声と自分の声がぴったりと合わさり、解放された心と身体が参加者と一体となる感覚。これは最後まで続いていく。そして、まるで宇宙の空間に置かれるような壮大な風景の中で心がひとつになっていく実感を、1人ひとりが味わいながら法悦の世界へ導かれていくのである。
今年は、アメリカで新たに1人のリーダーが誕生し、日米にとっても世界にとってもその動向が不安とともに注目される。世界平和は保つことができるのか?大きな転換期になるのかもしれない。
宗門は、平成33年の宗祖降誕八百年に向けて、宗祖の祈願である「世界平和」への意志を引き継ぎ、その事業遂行を活性化させている。ひとつ心をほどいてみると、そこにはさまざまな人びとのさまざまな思いが巡らされている。しかし、新年を迎えた今日、身体と息と心を調え、合唱するように唱える題目によって、ともにいる皆が皆を感じながら、心ひとつに声に出して唱える時、他に代えがたく尊い「皆が共に幸せになってほしい」という祈る心がひとつに重なる。そんな唱題行の実践を提唱したい。
(論説委員・早﨑淳晃)

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新年のご挨拶。

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