論説

2016年12月20日号

チェンジの時代と立正安国・お題目結縁運動

■チェンジの時代
今年は丙申(ひのえ・さる)の年で、改革の精力や動きが伸びてきて、変化していく年だといわれてきた。まさにその通りであった。チェンジの時代の到来といってもいい。
6月には英国で、EU(欧州連合)からの離脱か残留かの国民投票が行われ、離脱が決まって世界中を驚かせた。
世界平和やヨーロッパの発展を目指して来たEUにとってもまた世界にとっても大きな衝撃であった。
また先に行われたアメリカ合衆国の大統領選は、大方の予想に反してドナルド・トランプ氏が当選した。
トランプ氏は米国のチェンジを訴えて過激な発言をし、大衆不満層の支持を拡大したともいわれている。米国大統領の政策いかんによっては、日本画大きな影響を受けることは否めない。
世界の問題から日本に目を向けてみよう。
7月10日に実施された参議院選挙では、憲法改正の発議に必要な勢力が3分の2の議席を獲得した。これで衆参両院とも憲法改正の発議をすることができる。このほど参議院では憲法審議会が設けられて、いよいよ憲法論議が始まっている。これらの動きによって、第2次大戦後70年長く続いてきた日本の体制も大きくチェンジしていくのではないかと思われる。
■天災地変と気候変動
天災は忘れたころにやってくるのではなくなった。
未曾有の津波震災と原発事故を発生させた東日本大震災から5年、復興いまだしいの中で、4月14日と16日には、震度7の地震が熊本地方に起きて、熊本地方は大変な被害に遭った。加藤清正公依頼の大震災だという。地球にも大きなチェンジが起きている。
地殻変動だけではなく、今年は気候変動を強く感じた年でもあった。猛暑続きの夏が長引き、近海に発生した台風がつぎつぎと日本本土に上陸し、各地に水害をもたらした。「初めての経験」という声を被災者たちが口々にもらしていた。
夏から秋を飛び越して冬に入ったような寒い時期がやってきた。例年より1ヵ月も早い初雪に見舞われて、生活の歯車が狂いそうになったりした。
人類のチェンジは、自然界にもチェンジをもたらしているのであろうか。
■立正安国・お題目結縁運動
来年は丁酉(ひのと・とり)の年である。丁酉は従来の勢力を維持しようとする動きに対抗して、新しい動きが盛んになる年である。前年のチェンジの風潮が、さらに醸成されていくことであろう。
このチェンジの時代の背景には、ポピュリズムの台頭があるという。ポピュリズムは、民衆主義とも大衆迎合主義とも訳される。民衆の要求を政治運動に生かし、民衆の動員する政策である。
大衆が時代を動かす力を持っていることを、このチェンジの時代にまざまざと見せつけられている。
年が明けると、日蓮聖人降誕八百年を4年後に迎える。
八百年を慶讃しての立正安国・お題目結縁運動は、開花活動3年目となる。チェンジの時代であればこそ、日蓮聖人がそのためにお生まれになり、命をかけて提唱された立正安国の信仰を時代を動かす大衆に伝えていくことを急ごう。
排他的で利己中心主義や一国繁栄主義の行動は、決して人類の平和と幸福への道には通じないことを大衆に訴えていこう。
実乗の一善に帰する『立正安国論』の深義を今、伝える時がきた。
(論説委員・功刀貞如)

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2016年12月10日号

時代に逆行する不安2016年

新年まであと20日余り、今年は内外多難の年だった。
中東の混乱は、世界に大きな不安を与えた。シリアの内戦の長期化は、多くの難民を出した。シリアばかりでない。アフガニスタンからイランへの難民、イラクの北部諸都市をISが支配することによって起こったシリア難民、これら難民が西欧に流れた。
難民は、人道的には受け入れるべきであるが、すべて受け入れて保護するには経済的に限界がある。 難民の中に紛れて、IS(イスラム国)のテロリストが入り込んで、パリのテロのような残忍な大量殺戮を犯す可能性もある。このような不安が難民排除の理由となった。
今年は、異常気象で多くの被害が出た。
沖縄・小笠原諸島・フィリピン・台湾・中国など、たびたび巨大な台風に襲われた。北海道・東北地方は豪雨禍に見舞われて、農作物に大きな被害が出た。天候不順で日照率が少ないため、農作物の成長が遅れ、野菜が高騰した。
原因は、地球温暖化の影響であると云われている。
沖縄近辺の珊瑚礁が白化して死滅する区域が広がりつつあるという。海温が高くなっているのが原因である、と科学者は云う。
貝類などが好む藻類が、衰退または消失する「磯焼け」が起こっているという。これも地球温暖化によるという。 地球温暖化を防ぐために「パリ協定」では、全ての国が地球温暖化対策に取り組む事を定めた。アメリカの大統領に当選者トランプ氏は「パリ協定はキャンセルする」と演説した。協定は12月4日に発効、法的拘束力を持つことになっていたが、発効できるのかは未知数になった。
ただ、米企業400社が、トランプ氏に、パリ協定を守るよう訴えているという。トランプ氏は考えを変えるかもしれないが、どうなるかは予想が付かない。
このように、地球の将来を考えてすべき事を周知を集めて考えて来たのに、一人の人間の発言で簡単に止められると考える指導者がいるということが、我々を不安にする。
3月終わり、安全保障関連法案が施行された。「集団的自衛権」が認められ、現場の指揮官や隊員の状況に応じ、武器使用が認められるようになった。早速南スーダンへ350人の自衛隊員が派遣された。戦後、戦死者が一人も出なかった日本の自衛隊員から、今後死者が出ることもあり得るようになった。この法案は憲法学者からは違憲であるとの判断が下されている中での決定であった。
今後、戦死する隊員が出ることが無いよう祈りたい。
イギリスでは、EUから離脱するか、残るかを決定する国民投票が行われた。キャメロン首相は、離脱すれば英国経済は打撃を受け、生活水準も低下するであろうと訴えた。国民投票の結果は必ず残留に決すると考えたのだろうが、予想に反して離脱の方が勝った。
間もなくイギリスはEUに離脱を通告することになる。EUから中心国のイギリスが離脱することは、第2次大戦後国連を作り、IMF(国際通貨基金)を作って、国々が武力対立・経済的破綻しないように工夫してきたグローバル化への流れが、大きく後退するのではないか。
トランプ氏が、大統領選の際の公約「アメリカの利益ため」になることをやるという政治的信条は、自国中心的で、その精神は第2次大戦前の状態まで逆戻りしているように思う。
それにしても、クリントン候補とトランプ氏がお互いに悪罵を応酬し合っている姿をみると、悲しくなる。
なぜ建設的な信条を述べたり、施策を具体的に述べるように、周囲の人が進言しないのか不思議でもある。
大聖人は『観心本尊抄』の中で小乗教・未得道教等を信ずる人を評して「徳薄・垢重・幼稚・貧窮・孤露」といわれた。法華経的に見ると、ついこのような言葉が想像されてしまう。不遜すぎる批評であろうか。
(論説委員 丸茂湛祥)

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2016年12月1日号

障害への偏見なき社会に向けて

今年のリオ五輪は、治安上の問題などからも出場を辞退する選手もみられたが、大きな混乱もなく無事に閉幕を迎えたことはなによりであった。また次期五輪の開催が東京ということもあり、新聞やテレビ報道などもこれまでになく盛り上がっていたようにも見受けられた。
また五輪後のパラリンピック報道も従来とは異なり、詳細かつ丁寧な報道であった。実際これにより多くの人びとが、パラリンピックの競技が実に多くの種目にわたることに気付かされ、連日の報道により参加選手のまさにアスリートとしての輝く姿に感動したのである。
このような報道に対して、一部には、いわゆる「障害者の感動話」に仕立てているとの批判もあるが、しかし今回の報道はこれまでになく障害者スポーツについて、より一層の理解を深めたことは事実であろう。
近年、障害あるいは障害者について考えさせられることが多くある。今年7月に相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件では、容疑者の男は逮捕後も障害者を貶める発言を繰り返していた。これは障害を持つ弱者が標的となった悲惨な事件であり、この容疑者の障害者を蔑むことばは、どのような理由があろうとも容認できるものではない。しかしこのような障害者を巡る偏見や差別は、未だ多くの場面で散見されるのも事実である。
日蓮宗では昭和56年宗祖日蓮聖人七百遠忌御正当の年に「社会福祉法人立正福祉会」を設立、認可されている。この組織は日蓮宗の全国社会教化事業協会連合会によって、日蓮宗の社会教化事業の振興と児童の健全育成を図るために設立されたもので、現在全国の日蓮宗寺院に家庭児童相談室を開設し、多岐にわたる相談に対応している。
この立正福祉会が、新規事業として本年6月より「たちばな子どもの発達教室・たっち」を横浜市鶴見区の橘学苑内に開設した。この事業は児童福祉法に基づく児童発達支援事業であり、発達障害を持つ子どもへの療育を行うものである。
この発達障害とは、法律用語であり疾病概念ではないが、たとえば自閉スペクトラム症、注意欠損・多動性障害(AD/HD)、学習障害、精神発達遅滞などがあげられる。具体的には、社会性の発達やコミュニケーション能力の障害、興味や関心の偏り、また落ち着きのなさなどから、うまく社会適応ができない子どもたちであるが、このような発達上の問題をかかえる子どもたちへの社会的な理解はけっして十分とはいえない。
また、このような発達障害を持っている子どもの養育に不安を抱える親も多い。そのため、子どもへの支援と同時に親の悩みに寄り添っていくことも大きな課題である。現在、立正福祉会では、特に就学前の子どもたちを対象に、早期の療育を目指している。
なお、この教室の愛称「たっち」は、子どもが自分の力で立ち上がり、自立を意味する「立っち」であり、また子どもとのふれ合いを意味する「タッチ」から名づけられている。
児童憲章には「児童は人として尊ばれる」、「児童は社会の一員として重んぜられる」、「児童はよい環境の中で育てられる」と明記されている。
私たちは、障害の有無によって偏見や差別を受けることがあってはならない。まして社会の弱者である子どもは、しっかりと社会が守っていかなければならない。
あらためて宗祖の「子に過ぎたる財なし」のことばを、こころに刻み、宗門の社会に向けた活動を応援したい。
(論説委員・渡部公容)

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新年のご挨拶。

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