日蓮宗新聞
2016年10月10日号
立正福祉会・子どもの発達教室たっち開設
社会福祉法人・立正福祉会(渡部公容理事長)は新事業として「たちばな子どもの発達教室 たっち」(以下「たっち」で表記)を6月1日、横浜市鶴見区の橘学苑内にオープンさせた。
立正福祉会ではこれまで、「子どもの心理教室」や「家庭児童相談室」を寺院内に開設して高い評価を受けてきた。「たっち」は僧侶ではなく一般人の職員を主体に運営される。一般社会に近づく目的で脱寺院、非僧侶を主体とする現場運営はこれまでにない取り組みとして注目されている。
「たっち」の行う児童発達支援事業とは、児童福祉法に基づく発達に心配のある子どもに必要な療育のサービスを提供することを指す。具体的にはコミュニケーション力の不足から友だちとうまく遊べない子や落ち着きのない子などを対象に、発達に支援を必要とする未就学児とその家族をサポートする。
現在「たっち」では1日10人を上限として、マンツーマンの個別療育と複数の子どもとスタッフによる集団療育を行っている。「異なる環境になじむ力を高め、小学校入学時に困らないためのトレーニング」と考えるとイメージがわきやすいかもしれない。児童福祉法に基づく事業のため、サービスを受けるのには受給者証が必要となる。現場責任者の鈴木純子教育長は「予想以上に子どもの成長に不安を持つ親が多いのに驚いている。子どもだけでなくその親の悩みにも寄り添っていきたい。現代社会が必要としている事業だと改めて感じている」と話す。
仏教福祉を推進する同会にとってこの事業は積年の目標だったが、日蓮宗と縁のある学校法人・橘学苑(玉川日薩理事長=鎌倉市本山妙本寺貫首)が破格の条件で場所を提供してくれることから急進展した。「たっち」のネーミングは、自立を意味する「立っち」、ふれ合いを大切にするという意味の「タッチ」とともに、立ち上げに協力を惜しまなかった橘学苑の名前にも由来するという。名付け親の渡部理事長は「予算がなく内装や造作などはスタッフ手作りのものとなった。開所の式典も満足にできなかったが、〝個人は質素に社会は豊かに”をモットーとする橘学苑の校主・土光家の精神に鑑みれば結果的によかったと思っている。とはいうものの事業継続には支援者の拡充は不可欠。理解と支援の輪が宗内に広がることに期待している」と話す。
「たっち」の受付は月曜日から金曜日の9時から17時まで。また同施設を使って毎週土曜日の13時からは子どもの心理相談室として、子どもの養育上の不安や悩みなどの相談事業を行う。
2016年10月1日号
妙蓮尊儀第750遠忌宗門法要
日蓮聖人の聖母・妙蓮尊儀(「妙蓮尊尼」とも)の第750遠忌を迎え、9月15日に千葉県鴨川市大本山小湊誕生寺(石川日命貫首)で内野日総管長猊下(総本山身延山久遠寺法主)を導師に宗門法要が営まれた。またこれに先立つ14日には聖父・妙日尊儀と妙蓮尊儀のご廟がある同市両親閣妙蓮寺(上村貞雄住職)で前会墓前法要、12日には身延山頂の奥之院思親閣(望月海俊別当)で法要が営まれた。
(日蓮聖人と妙蓮尊儀=妙蓮尊儀の「妙蓮」は、日蓮聖人が母・梅菊御前に与えられた法号(父は貫名次郎重忠公=「妙日」)。諸国ご遊学で末法の世の救いは法華経にあると確信された日蓮聖人は、故郷の安房国(現千葉県鴨川市)に戻られ、まずもってご両親に法号を与えられ、孝養を尽くされた。日蓮聖人と母とのエピソードには、息を引き取った母のために日蓮聖人が読経・祈念したところ蘇生されたという話や、晩年の身延在山中は風雨いとわず山頂に登られ、故郷に眠るご両親に回向を捧げられたという話などがある。「我が頭は父母の頭」、「母の御恩の事、殊に心肝に染みて貴くをぼへ候」など、両親、母への思いをご遺文に綴られている日蓮聖人は、仏教徒が知らなければならない4つの大切な恩のうちの1つに父母への恩を挙げられ、孝養で報じる大切さを説かれている。妙蓮尊儀がご逝去されたのは文永4年(1267)8月15日。今年の9月15日は旧暦の8月15日にあたる。)