論説

2016年10月10日

人工知能(AI)との共存共栄

今から4年前の平成24年1月14日、将棋の元名人で日本将棋連盟会長の米長邦雄永世棋聖(68=当時)が、コンピュータ将棋ソフトとの特別対戦で敗れた。ソフトが公の場でプロに勝ったのは初めてで将棋界に衝撃が走った。
対戦した将棋ソフトはその前年、「世界コンピュータ将棋選手権」で優勝した、毎秒最大1800万手を読むという最強ソフト、名づけて「ボンクラーズ」。113手での勝利だった。ソフトを開発した伊藤英紀さん(49=現・富士通研究所)は記者会見で感想を聞かれると言葉に詰まり、感無量の様子で「頭が真っ白になりました」と笑顔で答えた。敗北した米長元名人は「見落としがあった。私が弱かった」と無念の弁。
コンピュータは高い計算能力でわずかな間にものすごい数の指し手を予想し、その中から最善の手を指すことができ、その性能も上がって、指し手をプログラムする技術も格段に進んでいるという。米長さんに勝ったソフトも複数のコンピュータをつなぎ、スピードも以前より早くなっていたという。
人間の脳が行うような判断や学習、言葉の理解などをコンピュータで再現しようとする技術のことを「人工知能」(AI)と呼んでいる。昭和31年(1956)に米国の計算機科学者が最初に提唱。その歴史は(1)草創期、第1次ブーム(1950~60年代)にはじまり、(2)産業化、第2次ブーム(1980~90年代)の技術を多様な産業に活用するようになる時期を経て、現在は(3)発展期、第3次ブームとされ、①人間の感情を読み取るAIを搭載したロボット ②AIが周辺状況を認識して自動車を走行させる技術 ③膨大なデータベースを活用してさまざまな分野で人間に助言するロボットなどの開発が進められる。
日本でも「国立情報学研究所」などで、AIで東大入試突破を目指す「ロボットで東大に入れるか」というプロジェクトに取り組んでいるという。2015年にはトヨタ自動車がAIの研究開発強化のため米国に新会社設立を発表。2016年に入って「囲碁」の「アルファ碁」(英グーグル・ディープマインド)が世界トッププロ棋士に勝利。AIが人間と共同で「執筆」した短編小説が、国内文学賞の第1次審査を通過。また米国で「AIによる自動運転で初の死亡事故」なども報じられている。
驚異的な進歩を遂げ、さまざまな分野で利用されるようになった人工知能(AI)。それは生活を便利にする一方、「軍事利用」や「人間の仕事を奪うのでは」などの警鐘も鳴らされているが、「日本の成長戦略の重要な柱である」ともいわれている。いずれにしても、①今後、社会に役立てるには何が必要か ②人びとに与える影響は…など、課題も大きい。急速に進歩している「人工知能(AI)の進化」と、私たち人間がどのように付き合っていくのか。大きく試されている時代に入っているといっても過言ではない。
『法華経』には、人間として、いつの時代でも、どこにあっても、誰にとっても、もっとも大切なものは「質直意柔軟」(〝しちじき〟にして。こころ〈意〉柔軟に…)(心が真っ直ぐになり、やさしく、おだやかになること)と教えられている。「人間」と「人工知能」、その関係はどちらかがどちらかに勝利するとか、超えるとかの関係にあるのではなく、人間と社会に共に良い利益をもたらす共存共栄の道こそ真に求むべき道であると思う。知的作業であっても、「人間」のためにも「社会」のためにも、総じて「未来」のためにも「質直意柔軟」の心を原点とし、根本姿勢としたい。
(論説委員・星光喩)

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