日蓮宗新聞
2016年8月10日号
長崎で原爆死没者追善供養
日蓮宗宗務院と九州教区(濵田義正教区長)が主催する長崎原爆死没者追善供養と世界立正平和祈願法要が8月2日、長崎市本蓮寺(山田浩文住職)で営まれ、僧侶檀信徒約300人が参列した。本蓮寺は昭和20年8月9日に投下された原子爆弾の爆心地から南に約2・5㌔に位置し、市内に発生した大規模火災で全山が灰燼に帰し、亡くなった檀信徒の数は今もつまびらかになっていない。
法要は、原爆が投下された午前11時2分、打ち鳴らされる梵鐘のなか、参列者全員が原爆死没者に黙祷を捧げて開式。小林順光宗務総長が導師を務め、参列した檀信徒らとともに読経・唱題を行い、原爆死没者を悼み、世界立正平和を祈願した。
法要後に小林宗務総長は、日蓮宗が他宗派に先駆け昭和29年に世界平和を目指す立正世界平和運動を開始したことに触れ、現在もその精神を引き継ぎ「いのちに合掌」をスローガンに「立正安国・お題目結縁運動」を展開し戦争のない安穏な世界の実現を目指していることを紹介。「核兵器の廃絶を訴え、戦争をしない、させない、許さないと平和の祈りを世界に訴えることが大切」とし、「一天四海皆帰妙法、立正安国の実現に邁進することが、すべての犠牲者に対する追善の道」と結んだ。続いて山田住職は「原爆投下当時を知る人はたいへん少なくなってきた。供養によって亡き人も生きる者も安らかになれるということを、1人でも多くの人に知ってもらう努力をしていきたい」と話した。
この法要に先立ち、平和記念公園内にある原子爆弾無縁死没者追悼祈念堂で小林総長を導師に追善供養を営んだ。その後、長崎県青年会(森慈弘会長)が主催し全国の青年僧に参加を呼び掛けて編成された行脚隊に有志檀信徒を加えた約100人が平和記念公園から本蓮寺までの約3㌔をふた手に分かれて唱題行脚した。また前日の1日には、小林総長と内局5人が長崎原爆資料館の中村明俊館長を表敬訪問。同館を視察し、核兵器廃絶の意義を再確認し、戦争のない安穏な社会づくりへの思いを新たにした。