2016年8月10日
苦難を乗り越え開催 リオ五輪
8月5日、オリンピックとパラリンピックが、ブラジルのリオデジャネイロで始まった。8月21日まで17日間の熱戦が現在繰り広げられている。
リオデジャネイロが選ばれるに当たっては、東京、マドリード、シカゴの争いがあった。しかし、南半球の国、経済力をつけつつある新興国ということで、リオが選ばれた。
これが決まったのは、2009年10月で、この頃のブラジルは、石油資源やサトウキビから作る新燃料バイオエタノールの生産国として、成長が期待される新興国であった。世界の経済の注目を集めていた高度成長期に、ブラジルはオリンピック開催を名乗り出たのである。
ところが、その後石油の値段が下がり、バイオエタノールの生産も採算がとれなくなって、外国の資本がブラジルから引き上げられることになった。さらに、貿易依存度が高かった中国の経済減速が、ブラジルの足を引っ張り始めた。
ブラジルの政界は、現在国営石油会社ペトロブラス社の裏金献金疑惑で、揺れている。ルセフ大統領も、職務停止中で、弾劾裁判がこのオリンピック期間中も開かれることになっている。
そのため、今回大統領の代わりに、ミッシェル・デメル大統領代行がオリンピックの開会宣言をした。
リオ五輪は、始まる前から、色々の問題が指摘されていた。
強盗・窃盗・殺人などの犯罪が多発しているため、リオの日本総領事館の情報では、注意度レベル1(十分注意)となっている。盗られないように、人前でスマートフォンを出して見せるななどという注意も出している。
主競技場、エスタジオード・マラカナン競技場の工事の進捗状況も、IOCのコーツ副会長が「アテネより悪い」と酷評したほどで、地下鉄工事もオリンピックには間に合わないのではないかと懸念されていた。
ヨットのセーリング競技の行われるグァナバラ湾も、大小のゴミが浮き、セイリングのヨットに傷がついてしまう懸念もあるという。
7月22日にはイスラム国に共鳴した若者が逮捕されるなど、テロの危険も懸念の材料である。ブラジル政府は、空港・駅・競技場・選手宿舎などに重装備の軍隊、警察官を8万人以上派遣し、治安の維持を図るようであるが、選手や五輪関係者は、宿舎と競技場の往復以外には、出歩くこともできなくなるであろう。
おまけに、デング熱・ジカウィルス・黄熱病など、蚊を媒介とするウィルス性の病気や、狂犬病などの懸念材料もある。ゴルフ選手の中には出場辞退者も出ているほどである。
先月の終わりに、選手村に入った日本選手団の中から、選手村の様子などが報告された。
選手村は24日に開村したが、水道の水漏れがあったり、トイレの水が流れず、シャワーのお湯が突然水になったり、床も汚れていて、選手が拭き掃除をしたという。オーストラリアの選手団は、「住めるような状態でない」とホテルに移ったそうである。
このような苦難の中でリオ五輪は行われているが、その苦難を乗り越えてオリンピック・パラリンピックが成功裏に終わることを祈りたい。
日本も、大地震などの不測の災害や、テロの不安はあるが、ぬかりなく2020年の東京オリンピックを成功させてほしいものである。
東京五輪はなるべく節約した五輪にしてほしい。八万席の固定観覧席は、維持費がかかりすぎ無駄であろう。一年に何度くらいしか使わない巨大な設備に、莫大な維持費をかけるのは愚であろう。小回りがきく実用的競技場にすべきである。
競技場の設計、エンブレムで躓きもあったが、今後選ばれた選手は、日蓮大聖人が、「おごる者は強敵に値ひて畏るる心出来するなり」(「佐渡御書」)と示されたように、自分の力に奢ること無く、強い相手に向かって恐れず対し、自分の持つ力を十分発揮してもらいたいものである。
(論説委員・丸茂湛祥)