オピニオン

2016年7月1日

仏教者の使命を再考すべき時

ネット通販サイト・アマゾンジャパンが、インターネットメディア運営会社「みんれび」の「お坊さん便」の販売を開始した。「お電話一本で法事・法要の手配、定額のお布施で僧侶を紹介します」というホームページでは「今までお寺と関わりがなく依頼の仕方が分からない・お布施の金額が分からない・今まで付き合ってきたお寺のお布施が高くて悩んでいる・僧侶を呼びたいが檀家になりたくない、そんな方の悩みをすべて解決します」とアピール。さらに「お布施の追加料金無し、お坊さんとは一度の読経ごとのお付き合い、紹介料は無料」などと宣伝している。
今年3月、全日本仏教会は「みんれび」に対し「お布施はサービスの対価ではありません。同様に戒名・法名も商品ではないのです。…僧侶の宗教行為を定額の商品として販売することに大いなる疑問を感じます」と販売中止の要請文を送った。確かに布施を「定額化」することは問題だ。布施とは執着を取るための修行の1つだからである。ただ日頃から仏教者が「布施は執着心を取るための修行です」と説いてきたかが問われる。
「みんれび」に対する消費者の評価はさまざまだ。要約すれば「このような多様なサービスアイデアは素晴らしい」「元々定価のない世界、こういう明朗会計のサービスも有りかと思う」「何を今さら反発だ。仏教会が宗教的行為を長年放置していたことこそが責められるべきだ」「今時の坊さんは長髪・髪染めは言うに及ばず…厳しい修行を積むといっても1~2年の期限付きで一体どれ程の徳を積まれたのか首を傾けたくなる御仁も多い」などである。
第一生命経済研究所では、日本の葬儀形態の変遷を、人口動態と経済面から家族葬ー密葬ー直葬ー「ゼロ葬」と予測した(第6回日本仏教心理学会学術学会)。将来、少子化と経済力低下で葬儀が激減するという。ならば今、僧侶が「お坊さん便」等を問題視する前に、仏教者本来の使命を再考すべき時でないだろうか。
 日本初の寺院建築・大阪四天王寺には敬田院(礼拝所)・療病院(病院)・施薬院(薬局)・悲田院(福祉施設)が併設され、僧侶が仏教者・医師・薬剤師・福祉士として人々の苦悩に寄り添っていた。つまり僧侶本来の役目は法要儀式だけでなく生老病死の苦悩に寄り添う活動だったのである。  
僧侶がこの原点回帰するためには、第1に一般常識を身に付け、社会から一層信頼を得ることが必要と考える。寺で生まれ育ち社会経験の乏しい僧侶には、少なからず一般常識に欠ける面がある。寺では自分の思いどおりに振る舞えるからだ。名刺交換・敬語表現・行儀作法・茶菓作法・電話応対・クレーム対応などには基本的マナーが必要だ。初対面の第一印象は10秒以内で決まり、その要因の55%が視覚からと言われる。僧侶らしい身なりと仕草こそ社会の信頼を得る第一歩となる。「お坊さんの常識は社会の非常識」と言われないようにしたいものである。第2は救済力である。人びとの苦悩に寄り添う活動には包容力と覚悟が必要だ。「一切衆生の同一の苦は、悉く是れ日蓮一人の苦と申すべし」(『諫暁八幡抄』)という宗祖の「代受苦」の精神を追従し、様々な「いのち」のあり方と真剣に向き合う活動が大事だと思う。第3は寺門の開放である。しばしば「お寺は敷居が高い」と指摘される。寺院を地域に開放し何時でも誰でもお参りしやすい雰囲気が仏縁を結ぶ。今後、葬儀や墓以外で如何に社会と繋がるかが僧侶の活動に求められるだろう。  
(論説委員・奥田正叡)

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