2016年4月10日
「戦争は人間の本能だ」という考えが
「戦争は人間の本能だ」という考えが人類学や哲学の分野で広がりつつある。欧米やアフリカで発掘された縄文期と同じ狩猟採取時代の遺跡から、大量の虐殺を示す人骨が発掘され、暴力での死亡率が十数%だとする研究データによるものだ▼岡山大学の松本直子教授、山口大学の中尾央助教らの研究グループが全国の縄文遺跡から出土した人骨を調べ、暴力による死亡率は欧米のデータの5分の1以下の1・8%と算出し、3月30日の英国の科学雑誌に発表した。戦争の発生は環境、文化、社会形態などの要因で左右されるという。縄文時代は1万2千年もの間、戦争のような争いの形跡はないとされてきたが、それが実証された▼縄文時代にはすでに死者の埋葬が行われていた。子どもの手形、足形付の土製品も発掘されている。何のためかは不明だが、幼くして亡くなった子どものものを、家の中にひもを通してつり下げて偲んでいたのだろう。死者を悼む気持ちが伝わってくる。青森県八戸市の国宝「合掌土偶」は豊穣や安産の祈願ともいわれるが、どれにしろ家族、集落の安穏を祈る姿なのだろう。火を囲んでの団らんの声が聞こえてくるようだ▼存知のことだが敢ていおう。常不軽菩薩の人間礼拝行はすべての差別を超えた行いであり、それぞれの家族の安穏、あらゆる人の争いのない平安を、そして皆が仏になることを祈ってのものである。(汲)