オピニオン

2016年3月10日

寺院活動で仏教の復活を

仏教離れがネット上で話題になっていたので追跡してみた。当初はそれを日本文化の崩壊と捉え、その意味で嘆かわしいという立場の声が多かったのだが、最近になって「仏教は文化とは関係ない」という発言が目立ち始めた。曰く、仏教離れは寺が葬儀や年忌に高い布施を要求するからだというのである。寺とつきあっても何も良いことはないという意見もあった。仏教はもはや日本文化の担い手ではないとも。
要するに日本文化が崩壊しつつあるのは事実だが、仏教の堕落は別物だということだ。これに対して仏教側からの反論を目にしていない。かくいう小生も反論できないのは、残念ながらかなりの部分で事実に近いと感じているからだ。かといって看過して良いものではない。深い反省と思い切った方向転換を図るべきだろう。
ところで小生はBAC仏教救援センターというNGOを主宰している。昭和55年に始まった全日本仏教青年会によるカンボジア難民救援活動がその母体である。この画期的な活動には本宗の先輩僧侶たちが先陣を切っていた。当初一会員でしかなかった小生は世界を股にかけた諸先輩の活躍ぶりを羨望と畏敬のまなざしで眺めていたことを思い出す。
当然ながら各宗派からも多くの青年僧侶たちが参加していた。他宗との交流に積極的とは言いがたい本宗僧侶としては貴重な経験になり、仏教という土俵の上で物事を考えるいい機会でもあった。
ほぼ同時期には曹洞宗ボランティア会(現シャンティボランティア会)の前身も発足している。かくして、日本仏教史上初となる、僧侶の団体による国際協力活動が産声を上げ、その後独自で活動を開始する仏教宗派や仏教系団体も出るようになって現在に至っている。
創立35周年を前に資料の整理をしていて驚いたのだが、この間にお預かりした浄財の総額10億円にもなっていた。推定100万余の人たちを下痢による脱水症状から救い、校舎、寄宿舎の建設や奨学金で延べ一万人もの子どもたちに教育を受ける機会を与えさせていただいているこの資金の多くは、全国の檀信徒の皆さまからの布施によるものだ。お寺でいただいた浄財はこんなところでお役に立っているのだと、仏教離れを論じる世論に声を大にして叫びたいところでもある。
当時、活動の舞台となったカンボジア難民キャンプは既に閉鎖されて久しいが、新たな難民が世界中に満ちあふれている。何とかしなければと思いながらも、机上でできる仕事では決してない。小生を含め当時のメンバーは古希を迎え、炎天下での作業など及びもつかない。
残念ながら、若い世代に同じような夢を持つ者は少ないようだ。一般社会では時々報道されてもいるが、青年僧侶となると皆無に近い。このように社会の諸問題から隔絶していることも仏教離れの遠因になってはいないだろうか。
勿論海外に行くばかりが活動ではない。資金や言葉の問題もある。貧困格差の拡大により、国内で支援を必要としている人たちの数は無尽蔵と言ってもいい。寺と僧侶による社会活動こそが日本文化を担いうる仏教の復活に繋がると思うのだが、今の様子ではいささか心許ない。
檀信徒を含む若者たちに期待するのは身口意三業による色読だ。唱えるだけのお題目から行動するお題目へ。宗祖降誕8百年を前に始めてみないか。きっと、お褒めの言葉をいただけると思う。
(論説委員・伊藤佳通)

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